【富士フイルム】「ヰよりイのほうがいい」 大日本セルロイド専務の一言が新会社の社名に 

会社名のフシギ

平藤 清刀 平藤 清刀

カメラやフィルムなどの写真機材から、医療関連製品、半導体材料などの高機能材料まで幅広い事業を展開する富士フイルム株式会社。社名は「フィルム」ではなく「フイルム」と書くのが正しいとか。

「フイルム」の「イ」は小書きしない

「フイルム」か「フィルム」か。「間違えられやすい社名」で検索すると、多くのWEBサイトに富士フイルムの名が出ている。正しい表記は「フイルム」で、「イ」は小書きしない。

「フイルム」は、初め「フヰルム」と表記されていた。後半で詳しく紹介するが、富士フイルムの母体となった「大日本セルロイド株式会社写真フヰルム部」の看板を眺めていた、同社専務・淺野修一氏(後の富士写真フイルム初代社長)が、「ヰよりイのほうがいい」と考えて「フイルム部」へと書き改めさせたという。これが「フイルム」と表記される理由である。また、このとき以来、商品名を「フィルム」に統一した。

さて「Canon(キヤノン)」や「キユーピー」のように、表記は小書きしないが発音は「キャノン」「キューピー」と拗音になる社名がある。だが「富士フイルム」は拗音にならず、字面通りに発音するのが正しいそうだ。

セルロイドベースの写真フィルムを国産化

セルロイドのベースに写真乳剤を塗布した写真フィルムは、1889年に米国コダック社の創始者ジョージ・イーストマンによって開発された。

セルロイドが日本に入ってきたのはそれより前の1870年代で、1910年代にかけてセルロイド製造会社が相次いで設立された。第1次世界大戦の勃発によりセルロイドの需要は増したが、それも終戦により急激に低下。戦後の大不況も重なって、業界全体が共倒れになりかねない危機に瀕した。そこで同業8社が団結して、1919年9月に大日本セルロイド株式会社(現ダイセル化学工業株式会社)が設立された。

初めは、セルロイドを使用した主要製品として、文房具、玩具、日用品などを製造していたが、企業としての発展を目指すため、新たな需要を開拓するべく着目したのが、写真用と映画用のフィルムだった。

大日本セルロイド社長・森田茂吉は、「フィルムの国産化は、技術をもつ自社の社会的責務」ととらえ、フィルムベースの製造、感光材の製造、塗布、加工に至るまで一貫して行う、国産写真フィルムメーカーを目指した。

国産フィルムの開発は、セルロイドをフィルム状に薄く引き延ばす実験からスタート。後に、写真乾板の工業化を進めていた東洋乾板と提携して、写真乳剤の研究も進めた。

1931年7月、ロールフィルムを試作。これを「大日本フヰルム」と命名し、翌年に映画用のポジフィルムが完成した。

1932年11月、恒常的な事務を行うため、東京銀座に「大日本セルロイド株式会社写真フヰルム部」を開設。その1年後、写真フィルム事業を分離。1934年1月、新会社として富士写真フイルム株式会社を設立し、経営することを決定したのである。

外観はシンプルだがフィルムはファインケミストリーの極致

富士写真フイルムは2006年に持株会社制に移行し、社名を「富士フイルムホールディングス」に変更。富士写真フイルムの事業は、新たに設立した事業会社「富士フイルム株式会社」が継承している。

また、写真事業で培ってきた独自技術やノウハウを活用することで、化粧品や医薬品などの分野にも事業を広げているという。

「写真フィルムは、外観からするとすごくシンプルなものに見えるかと思いますが、実はファインケミストリーの極地といわれるほど高度な技術が集まったものです。写真フィルムの技術は、100種類にも及ぶ高機能素材の反応を思い通りに且つ精密に制御する技術となっておりまして、非常に高度な技術が詰まっています」

一般向けの写真機材では、「チェキ」の愛称で知られる「INSTAX(インスタックス)」が、今年で25周年を迎える。接写や自撮りなどに最適な「INSTAX mini 12」が3月16日に発売されたばかり。その他「INSTAXシリーズ」では、カメラ背面のモニターを見ながら撮影したり、画像を選んでプリントできたりするハイブリッドインスタントカメラや、スマホで撮影した画像をチェキプリントに印刷できるスマホプリンターも提供している。

「インスタントカメラのユーザーは、多数おられます。ユーザーのニーズが多様化しているので、それに対応したラインナップを増やしています」

カメラ愛好家やファミリー層、ふだんカメラを使わないスマホユーザーに至るまで、あらゆるユーザーに対応できるよう、豊富なラインナップがそろっている。

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▽富士フイルム株式会社
https://www.fujifilm.com/jp/ja

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