アニメとコラボした駅弁といえばアンパンマン弁当、ゲゲゲの鬼太郎丼など色々思いつくが、いずれも内容が駅弁とは結び付かないアニメで、作者の出身地で発売されることがほとんどだ。この駅弁は「駅弁ひとり旅」という駅弁をモチーフにした漫画の主人公・中原大介をパッケージに採用し、写真に写ったこの駅弁をおいしそうに舌をペロリと出して見つめている様子が描かれていて他に類を見ない。商品名を見ると、加熱機能付きで温かくなる駅弁だと察しがつく。湯気の出るホカホカの駅弁を味わってみた。
まずは平らな場所に置いて温めるためにひもを引っ張る。蒸気がシュウシュウ、食欲をかき立てるニンニクの淡い香りにクンクン。音と匂いのコラボレーションを楽しむこと6分間で準備完了。温かくなったパッケージを外し、ふたを取ると熱気に包まれた、作りたて感のある中身が姿を現す。
肉は松阪市の老舗精肉店から黒毛和牛のA-4、A-5ランクだけを仕入れて使用しているこだわりよう。赤はニンジン、黄色が錦糸卵、緑は菜の花で信号色を彩っている。
まずはロースと思われる薄切り肉だけを口に運ぶ。ほのかに甘い薄い醤油仕立てで肉本来の味が感じられ、間違いないおいしさ。脂の部分がより味に深みがあったのは、自分の口内で温度を上げて固体を液体にするのではなく、温めた熱で固体が完全に液体になったという温め効果が出ているからだと思った。
錦糸卵とご飯もしっかりと肉を受け止めている。甘めのだしの潤いをご飯に多く染み込ませるすき焼き肉とは違っておいしく食べさせるのは難しく、試行錯誤を繰り返したと思われる。それを温めて蒸気を充満させることで克服したのは、さすがとしか言いようがない。
ニンジン、菜の花も彩りよく、歯応えがしっかりあっていい箸休めになっている。
冬にこそ食べたい駅弁だ。
1700円。紀勢本線・松阪駅「㈱あら竹」☎0598214350