(3)出産・育児休暇と職場復帰支援
フランスでは、条件を満たせば両親共に、出産休暇や育児休暇を取ることが可能です。母親は産前6週間・産後10週間の休暇を取得できます。また産休の間、休暇を取る前の給与に応じた産休手当が給付されます。
さらに、母親は出産後3年間にわたり育児休暇をとることもでき、その間に手当を受け取ることが可能です。しかし、手当の額が少ないために、実際には育児休暇制度があまり活用されていない点が問題視されています。ちなみに出産時には父親も、28日間の育児休暇を使えます。
日本においても、出産・育児休業制度があり、母親は産前6週間・産後8週間にわたり休みをとることができます。その後、子が1歳(場合によっては2歳)になるまで育児休業も取得可能です。父親についても、産後期間を含めて、育児休業を取れる制度が整ってきました。
日本の出産・育児休業はまだ拡充できる余地が大きいものの、フランスの制度に近づける形で着実に仕組みが変わりつつあります。また、育児休業中の手当については日本の方が金額は多く、子育てをサポートできる仕組みになっていると言えるでしょう。
ここ十数年は少子化対策に苦戦するフランス
ヨーロッパの出生率低下に歯止めをかけた「優等生」として知られるフランスですが、近年は苦戦が続いています。女性1人が一生の間に生む子どもの数を考える上で合計特殊出生率を見ることが多いです。合計特殊出生率は、2010年の2.03をピークに落ち始め、2023年には1.68まで落ち込みました。
なぜフランスの出生率が低下したかについては、さまざまな可能性が考えられています。高等教育を受ける若者が増加し、それに伴って晩婚化が進んでいることが大きな要因のひとつです。ロシア・ウクライナ戦争の長期化や気候変動問題による将来不安などが、出産をあきらめさせる一因となっているとの議論もあります。
少子化をできる限り食い止めるために、子育てを支援する政策を続けることは欠かせません。しかし、それと同時に重要なのが、子どもを産み育てやすい社会環境の整備です。経済的支援はもちろん、子育て世帯に対する社会全体の理解や、支援する雰囲気をどのように広めていくかが求められています。
【参考】
▽こども家庭庁「子ども・子育て支援制度」
https://www.cfa.go.jp/policies/kokoseido
自治体国際化協会パリ事務所「フランスの子育て支援政策について」https://www.clair.or.jp/j/forum/pub/docs/542.pdf
▽国税庁「扶養控除」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1180.htm
▽Service-Public.fr
https://www.service-public.fr/particuliers/vosdroits/F16225?lang=en
▽European Commission「France - Maternity and paternity allowances」https://ec.europa.eu/social/main.jsp?catId=1110&langId=en&intPageId=4533
労働政策研究・研修機構「出生率の低下と「出産休暇」の創設」
https://www.jil.go.jp/foreign/jihou/2024/02/france_02.html
厚生労働省 イクメンプロジェクト「育児休業制度とは」
https://ikumen-project.mhlw.go.jp/employee/system/