俳優でモデルの杏さんも子育てに奮闘していることでおなじみのフランスは、ヨーロッパでは少子化対策の「優等生」として知られてきた国です。
日本での少子化対策を考える上でも、フランスでの政策は参考にされてきました。フランスではどのような取り組みがされてきたか、フランスと日本の制度にどのような違いがあるのかについて紹介します。
「優等生」として少子化対策に取り組んできたフランスですが、ここ十数年ほどは少子化の進行に苦しめられています。教育の高度化に伴う晩婚化や、将来への不安が影響しているといった議論もあります。粘り強く少子化対策を続けるだけでなく、子育てに対する社会全体の理解や、支援する雰囲気をつくり出す取り組みが必要です。
フランスが取り組んできた少子化対策
フランスが取り組んできた少子化対策を、(1)経済支援と税制優遇(2)育児・教育サービス(3)出産・育児休暇と職場復帰支援、の3つのジャンルごとに見ていきましょう。
(1)経済支援と税制優遇
フランスでは、20歳未満の子どもが2人以上いると家族手当が支給されます。特に3人以上の子どもを持つ家庭に対しては、手当はより手厚いです。所得制限はなく、子どもがいれば手当を受け取れます。
日本で子どもがいる家庭には、児童手当が支給されます。2024年10月から児童手当制度が見直され、
・所得制限が撤廃
・子が高校卒業まで手当を支給
・第3子以降には手当を増額する
など大きく仕組みが変わっています。たとえば第3子以降には、今まで月に1万〜1万5千円支給されていたのが、改正後は月3万円となりました。日本の児童手当は、フランスの家族手当により近い仕組みになったと言えます。
税制面を見るとフランスでは、子どもが増えると税負担が小さくなるように所得税が計算されます。簡単に言えば、子どもが増えるほど課税の対象とならない所得を大きくできるようになっています。3人以上子どもがいると、課税対象から外れる所得がさらに増える制度です。
日本ではこうした制度の代わりに、扶養控除または特定扶養控除という形で、子どもがいる家庭の所得税負担を減らしています。ただし、フランスと異なり、控除は16歳以上23歳未満の子どものみが対象です。16歳未満の子どもがいても、所得税は減りません。また、フランスの税制度と比べると、控除される効果は小さい傾向にあります。たとえば、両親と大学生3人からなる世帯を考えると、家庭全体の所得がおよそ250万円以上あれば、フランスの制度の方が税の対象から外れる所得額が大きくなります。
(2)育児・教育サービス
フランスでは2019年から、3〜6歳の幼児教育が義務化されました。そのため、3歳以降の子は公立幼稚園には無償(給食費は除く)で入園できます。また入園後の活動は、アルファベットを学ぶなど、教育に重きをおいた内容になっています。
日本では、幼稚園・保育園や、これらの中間的な役割となる認定子ども園といった施設を利用するものの、義務ではありません。2019年から日本でも利用料が一定の範囲で無償化されましたが、給食費や通園送迎費、行事費などの負担が原則必要です。保育園や認定子ども園では、教育だけでなく子どもを保護・養育する意味合いも強くなります。