「女性ロックバンドの多くは長続きしない」と言われています。理由は様々でしょうが、確かに国内外の音楽シーンを見渡してみると、10年以上の長きにわたって活動を続ける女性ロックバンドは少なく、解散や活動休止などを経て復活することはあっても、休まずに活動する例は数えるほどしかありません。
1989年から今年まで35年間、一度も休まずに活動を続ける日本の女性パンクロックバンドがいます。ロリータ18号です。
90年代後半にはメジャーデビューし、お茶の間でも人気に
1989年の日本では空前のバンドブームが巻き起こりました。ロリータ18号はそのブーム最中、ボーカルの石坂マサヨが16歳のときに幼馴染みと始めたバンドです。
結成当初は好きなバンドのコピーなどを演奏していましたが、オリジナル楽曲を作り始めると、ライブハウスシーンで注目が集まります。
90年代中盤に巻き起こったインディーズブームの際には、さらに脚光を浴び、結成8年後の1997年にはメジャーデビューを果たします。以降は、テレビの音楽番組にも数多く出演し、その独特なキャラクターと音楽性から、ライブハウスに行ったことがない人の間でも人気となりました。
アメリカなどのライブツアーも度々敢行。海外でもその名を知られるようになりジョーイ・ラモーン(ラモーンズ)、オルガ(トイ・ドールズ)といったパンクロック界の大御所アーティストのプロデュースを受けた作品もリリース。バンドのキャリアを着実に高めていった時期でもありました。
メジャー契約解除後、それまで以上の精力的な活動へ
しかし、2000年にレコード会社との契約が切れます。わかりやすく言えばセールス的なヒットには至らなかったためです。人知れず解散したり、尻つぼみのように消えていくのが多くのロックバンドの例でしょう。
しかし、ロリータ18号の心は折れることなく「第二章の始まり」とも言える精力的な活動をスタートさせます。ライブシーンで存在感を高め、メンバーチェンジこそ激しかったものの、結成から35周年を迎える2024年まで一度も解散や活動中止することなくボーカル・石坂マサヨはステージに立ち続けました。
冒頭の通り、女性ロックバンドの多くが「長続きしない」と言われる一方、どうして彼女はバンドを休むことなく続けてきたのでしょうか。本人に聞いてみました。
「私が頭おかしいからじゃないですかね(笑)。でも、これまでに『バンドをヤメよう』と思ったこと2度くらいで、そういう発想にならないんです。バンドで音を出すこと、歌うこと、お客さんと音楽を通してコミュニケーションを取ること、あと、打ち上げで美味しいお酒を飲むことが何よりも大好きで楽しいから続けられたと自分では思っています」(石坂マサヨ)
「バンド以外の人に迷惑をかけない分、気持ち的にはかなり楽」
「好きだからこそ長続きする」。そう言うのは簡単ですが、メジャー契約が切れた2000年以降のロリータ18号は完全なる自主運営。自由に活動できる気楽さはあっても、全てに置いて責任が伴い、お金も付きまとうものでしょう。それでも石坂マサヨは「メジャー期よりもずっと楽にバンドの活動ができている」と。
「メジャーの頃は作品が『商品』になるので、それを1枚でも多く売れるよう『働いている』感じがありました。もちろんレコード会社と契約しているわけですからビジネスとして当然のことです。しかし、もともとが『ライブをやりたい』『打ち上げで美味しいお酒が飲みたい』という発想だったので、私にとっては大変な日々でした。
そんな経験を経て、元に戻った自分たちの運営での活動は、確かに問題や失敗の連続ではあったけど、それを乗り越えるのも、修正するのも全部自分たち。バンド以外の人に迷惑をかけない分、私の気持ち的にはかなり楽でしたね」(石坂マサヨ)
「さらにワガママを言わせてもらえるなら…」
「自分たちだけ」「自分たちならでは」の活動を続けることで、結果的にメジャー期よりも着々とリスナーからの支持を得ることとなり、35周年を迎える2024年11月24日には、念願の日比谷野外音楽堂でのライブを敢行することが決まりました。
「自分のワガママでここまで続けてきたロリータ18号ですが、気づけば35年も経過していました。16歳だった私が52歳になっていたというわけです(笑)。さらにワガママを言わせてもらえるなら、ぜひ日比谷野外音楽堂に遊びに来ていただき、我々と一緒にお祝いができると良いなと思っています」(石坂マサヨ)
国内外の音楽シーンを見ても稀有な存在のロリータ18号。日比谷野外音楽堂でのライブは、35年休まずに続けてきた集大成的なステージになるはずです。
ロリータ18号
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