大阪市内には、尼崎駅と京橋駅を結ぶ地下路線、JR東西線があります。北新地駅を通ることから知名度が高いかと思いきや、関東からの旅行者には「関西にも東西線という路線があるんですね。知らなかったです」と驚かれることもあります。なぜ、JR東西線は地味な存在なのでしょうか。また、JR東西線のメリットは何でしょうか。普段あまり注目されないJR東西線にスポットを当てます。
JR東西線の概要
JR東西線は、尼崎駅と京橋駅を結ぶ12.5kmの路線です。開業は1997年3月で、「JR」が正式に付く唯一の路線です。そのほとんどが地下路線であり、京橋駅と尼崎駅を除くと、大阪駅南側に位置する北新地駅が最も乗車人員の多い駅です。
北新地駅は大阪駅とは別の駅ですが、特例として、尼崎~大阪間、京橋~大阪間で有効な定期券を持っている場合、北新地駅での乗降が可能です。逆に、尼崎~北新地間、京橋~北新地間で有効な定期券を持っている場合、大阪駅での乗降も認められています。
JR東西線は、JR神戸線、JR宝塚線、JR学研都市線に乗り入れています。つまり、JR東西線はJR神戸線・JR宝塚線とJR学研都市線をつなぐ役割を果たしているのです。普通列車だけでなく、区間快速や快速もJR東西線に乗り入れますが、線内では各駅に停車します。
なぜ地味なのか
知名度が高くない理由の一つとして、利用者数が挙げられます。国交省が公表した最混雑時間帯(1時間)における最混雑区間の混雑率を見ると、JR神戸線は101%(塚本→大阪 緩行)、JR宝塚線は87%(塚口→尼崎 緩行)、JR学研都市線は120%(鴫野→京橋)に対し、JR東西線は77%(大阪天満宮→北新地)しかありません。
次に、大阪駅と北新地駅の比較です。大阪駅はJR西日本管内で最も1日平均の乗車人員(2022年度)が多く、約34万7000人に上ります。一方、北新地駅は17位で、約4万人です。ちなみに16位は茨木駅(大阪府茨木市)で、大阪駅付近にある駅としては北新地駅の利用者数は少ないように見えます。
北新地駅周辺は飲み屋街が広がる一方、大阪駅周辺では再開発が進むなど、周辺環境にも違いがあります。それに加えて、大阪駅は大阪環状線や大阪メトロ御堂筋線との乗換駅であることから、圧倒的な存在感を放っています。北新地駅は御堂筋線の梅田駅からやや離れているため、やはり大阪駅の存在感がJR東西線を地味にしている要因の一つではないかと思います。
実は神戸まで1本で行ける
JR東西線の強みは、大阪メトロとの乗換駅が多い点です。海老江駅は大阪メトロ野田阪神駅(千日前線)、北新地駅は西梅田駅(四つ橋線)、大阪天満宮駅は南森町駅(谷町線、堺筋線)、京橋駅は長堀鶴見緑地線と接続しています。
なお、北新地駅は梅田駅、東梅田駅へ乗り換えられますが、大阪駅と比べると、乗り換えに時間を要します。
JR東西線は福島や北新地など飲み屋街の多いエリアを通り、同線を使うことで大混雑する大阪駅を避けながら、大阪メトロに乗り換えることができます。また、大阪メトロ堺筋線が乗り入れる南森町駅からは、阪急京都線や千里線と直通運転しているため、茨木や高槻方面にもアクセスできます。
さらに、地下鉄接続駅から乗り換えなしで神戸方面へ行けることも強みです。JR神戸線の新快速に比べて混雑が少なく、着席できるチャンスが多いのもメリットと言えるでしょう。ただし、JR神戸線からは普通列車しか乗り入れていないため、時間がかかります。
一方で、京橋駅を除くと、JR東西線の駅名と大阪メトロの駅名が一致していないことも、JR東西線の知名度が高くない一因となっているように感じます。
いずれにせよ、JR東西線を知っていると行動の幅が広がると思うので、機会があればぜひ利用してみてください。