「君には期待しているよ」優しそうに見えた上司が豹変 休日に鳴ったスマホ「資料が間違ってる!すぐ直しに来い!」 これってパワハラですよね【社労士が解説】

長澤 芳子 長澤 芳子

入社して3年目のAさんは、初めて転勤を指示され新しい部署に配属になりました。配属先の上司は厳しい人だと同期から聞かされていたため、配属前から緊張していたのです。

配属後、初めて出社した際には笑顔の上司が迎えてくれて、同僚もAさんを歓迎しています。さっそく歓迎会が開かれて上司からも「君には期待しているよ」と声をかけてもらいました。「案外良い人じゃないか」と思っていたAさんでしたが、その考えは甘かったのです。

しかし一通りの業務の説明を受けて本格的に仕事を始めると、少しずつ上司の対応が厳しくなってきます。そんなある日、休みの日になり引っ越しの片づけをしようとしていたところ、スマホが鳴りました。電話の相手は上司からで「この資料間違ってるじゃないか!すぐ直しに来い!」と怒鳴られてしまいます。どうやら休みの前に提出した書類の内容が間違っていたらしく、その日は引っ越しの片付けもそこそこにAさんは会社に行って上司に謝罪し、資料を修正しました。

その後も上司は深夜や休日など関係なく電話をかけてきて、電話に出ないとさらに大きな声で叱責してきます。「やっぱりあの上司は厳しい人だったんだ」と思い、Aさんはすっかり参ってしまいました。Aさんの上司の行為は問題ないのでしょうか。社会保険労務士法人こころ社労士事務所の香川昌彦さんに詳しく聞きました。

ー深夜・休日の上司からの連絡に問題はないのでしょうか

結論からいうと問題ありです。労働契約の原則というのは時間の拘束です。したがって定められた就業時間以外に仕事の話をするのは、よくありません。会社が火事になったとか、取引先が倒産したなど、やむを得ない事情の時以外は連絡するべきではないでしょう。

ポイントは上司からの連絡が、そのタイミングでないといけないのかという点です。話をするのが次の営業日でも問題ないのなら、休日や深夜に連絡をするというのはよろしくありません。

ーAさんの上司のように、電話で叱責するのはパワハラにあたるのでしょうか

まず時間外に仕事をさせようとするのが問題です。そもそも労働基準法では、36協定を結んでいない限り残業をさせてはいけないとされています。上司とはいえ就業時間外まで拘束することは許されないのです。休日や深夜に業務連絡をするだけでも問題なのに、叱責となるとパワハラと認定されてもおかしくないでしょう。

Aさんはまず上司に改善するよう求め、それでも連絡が無くならないようであれば、会社が設置しているハラスメント相談室に連絡するか、労働基準監督署などに相談することをおすすめします。

ー上司の電話対応は休日出勤・深夜残業にあたるのではないですか

もし上司からすぐに電話に出るようにいわれていたとしたら、電話の応答時間だけでなく、待機している時間も含めて残業時間として認定される可能性があります。電話の時間も短く、頻度も少なければ認定されない場合もありますが、Aさんの場合は頻度も多いと予想されるため、労働時間だと認定される確率は高いでしょう。

◆香川昌彦(かがわ・まさひこ)社会保険労務士 大阪府茨木市を拠点に「良い職場環境作りの専門家」として活動。ラーメン愛好家としても知られ、「#ラーメン社労士」での投稿が人気。

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