ステンさん 日本に来る前、オランダでは蘭農家で働いたり趣味で柔道をしたりしていて、陶芸は美術の知識もなく、まったくの素人でした。一昨年、(優理さんと)結婚するとき、ここに挨拶にきて、お父さんの作品を見たときは本当にその美しさにびっくりしました。それで自分もやってみたいとお願いし、弟子入りしたんです。そうしたら、すぐ入院されてしまって…。今は面会のとき、自分の焼いた器を持っていって指導してもらっているのですが、早く元気になって、もっと工房で技術を教えてほしいです。
真徳さん ステンは今年春、テレビ局の方から声をかけられ、日本を訪れた外国人を紹介する番組に出演。ステンがここに来て、本格的に作陶をするようになってまだ1年少しですが、ネルソンより有名になったかも(笑)
ステンさん いまは暑いので夜の涼しい時間にろくろを回すことが多いですが、ろくろの音を聞くとネルソンがやってきて、そばに座ります。まるで「今日の調子はどう?」って尋ねるみたいに(笑)私にとっては先輩なので、ネルソン監督って呼んでいます。
真徳さん 今春の有田陶器市前に、ステンがろくろを回していたら、ネルソンが父にやっていたように、ステンの肩の上に登ったんですよ。そのときたった一度だけでしたけどびっくりしました。父のことが恋しかったのか、あるいは、ステンのことを職人として認めた証なのか(笑)ネルソンはお父さん子なので、本当は父の肩の上でくつろぎたいんだけれど…という寂しい気持ちなのかもしれません。
ステンさん あのときは嬉しかったですね。ネルソン監督に認められたようで(笑)
真徳さん 父は「混沌とした今の世の中に一条の希望の光となるような焼き物をつくりたい」とよく言っています。たとえばですが、鬱やストレスなど自分ではどうにもできない精神状況に置かれていて、「綺麗だ」と感じることのできる心の余裕さえ持てなくなっていた方が、うちの銀河釉の器を見て「久しぶりに美しいという感情を味わえた」と安堵されることがあります。そんなときは父の作った器ってすごいなと感じます。
真徳さん 「宇宙から地球を見たら、国境なんて見えない。芸術は国境、宗教、思想など異なる文化の壁を超えて、人に勇気や希望を与えたり、傷ついた心を癒したりする力がある。私の創る銀河釉もその一つでありたい」との父の思いを、これからも僕たちがしっかりと受け継ぎ、家族で協力して守っていきたいと思っています。
ステンさん 師匠(お父さん)が工房にいない今は、自分でいろいろ仮設を立て、チャレンジできる期間だとポジティブに捉えています。ゴールは師匠を超えることですが、そのレベルはものすごく高いから、今は毎日やれることをやる。でも、いつかは師匠のレベルまで到達して、自分のオリジナリティを出していけたらと。ネルソン監督の指導のもと、窯を盛り立てていけるよう、一緒にがんばります(笑)
【施設名】「銀河釉 玉峰窯」
【住所】佐賀県武雄市山内町宮野23580-1(工房)
【ホームページ】https://www.gingayu.com
【Youtube】https://www.youtube.com/@gingayu_gyokuhogama
*8月16日から30日まで、TUTAYA BOOKSTORE岡山駅前店にて開催されている「イロドリの夏展」に出展。夏をテーマにした銀河釉や器や、ネルソンが描かれたTシャツなどネルソングッズも販売する。