「大好きな店がなくなってはいけない」閉店危機の焼き肉店、常連客が継承 味・方針守り日々奮闘

京都新聞社 京都新聞社

 大好きな店がなくなってはいけない―。高齢の店主が閉店しようとした京都府舞鶴市浜の焼き肉店「とうがらし亭」の経営を、常連客だった市内の男性2人が今春に引き継いだ。客として愛した味や方針を守り続けようと、日々奮闘している。

 同市余部下で自転車店兼カフェを営む藤田直郁さん(45)と佐久間レイさん(23)。藤田さんはとうがらし亭がオープンした26年前から店に通ってきたが、今年3月下旬に男性店主(77)から「もう3月末で店をやめようと思っとんや」と告げられた。

 とうがらし亭は手頃な価格のコースで焼き肉が楽しめることや、常連客を飽きさせないようコースの内容が少しずつ変わることが魅力で、藤田さんは週に複数回行くこともあったという。昨年9月からは佐久間さんも藤田さんと一緒に度々足を運び、次第にとりこになっていった。

 閉店を打ち明けた時、店主は「一番の常連」と認める藤田さんに対して「あんたやったら継がせてもいい」とも語っていた。味やスタイルを熟知しているとの信頼があったからこその言葉だ。

 とうがらし亭を終わらせたくないとの思いで一致した藤田さんと佐久間さんは、わずか数日で継ぐことを決意。閉店間近の3月26日にとうがらし亭を訪れ、店主に継承の計画を告げた。店主は「それはええ話や」と喜んで承諾したという。

 それから約1カ月間、2人は予約のみの営業を続けながら肉の切り方やたれの作り方などを店主から教わり、4月26日に再オープンした。

 常連客からは「店を続けてくれてうれしい」との声がある一方、肉の厚みなど「今まではこうだった」と指摘を受けることも。店と客が一体となって、これまでの味に近づけようと試行錯誤を続けている。2人は「味もスタイルも変えないことが目標。地元の人になじみある店であり続けたい」と話す。

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