「シール販売員です。マジで疲れました」
ぷっくり感とつやつや感が特徴の「ボンボンドロップシール(通称:ボンドロ)」など、立体型シールの人気が加熱。手に入れようとする人たちの熾烈な争いが、シールを取り扱うショップで繰り広げられています。そんな状況についての投稿がThreadsで話題に。
開店前から並ぶ人、品出し中の店員に群がる人も当たり前の光景に。働くショップでは、耐えきれずに退職する人も。
「精神的にも体力的にもかなりキツい。カオスすぎます」と、過熱しすぎるブームを嘆くショップ店員Yさん(仮名)に取材しました。
子ども用のコーナーに、大人が参入して…
駅近の商業施設内にある、子供向けのバラエティショップで働くYさん。
扱っている商品は文房具やおもちゃ、ヘアアクセサリー、バッグ、お菓子などで、ブーム前に訪れるのは子どもがメインだったそうです。シールコーナーは、横1.5mの什器2台分で、商品割合としては10~20%ほど。
「シール交換が子どもたちの間で流行っていると聞こえ始めた頃は、ボンドロも知っている人は買うけど、売れ残っていることも多かったです。
私の体感からして争奪戦が激しくなったのは、テレビの情報番組でシール交換の特集が放映された後。ラブブのシールが出回ったことで、加速した感があります」
主婦層を中心とする大人の女性の来店が一気に増加。加えて、仕事休憩中や仕事帰りの男性、孫に頼まれたと話す高齢者など幅広い層が訪れるようになったと言います。
店内には「シールに関する問い合わせはご遠慮ください」の紙を貼っているそうですが、なんの効力もないそうです。
「毎日何十回も、シールありますか?と聞かれ、鳴り止まない電話にノイローゼになりそうです。心無い方からはシールがないことで怒られたりもします。一切敬語を使わずに、シールないの?なんで?と電話が来ることも」
ルールを設けているのに、過熱する日々
ショップで働く人たちは疲労困憊しているなか、クリスマス・年末年始商戦で勢いを増しており、現場はさらに混乱。
「今は、シール売場に店員が来たら、お客様が集まって店員の一挙手一投足をうかがっています。何をするんだろう?という目で静まり返るんです。
あるいは、シールを持ってきた店員を見て、ざわめき出すことも。品出し中に、お客様が押し寄せて、シール売り場から離れることができなかったこともあります」
シールを売場で出そうとした瞬間に手をつかまれる勢いでシールを奪い取られる、シールを持つ顔の真横にお客の手が伸びてくる、段ボールの中の荷物にまで口出しされた、なども経験。
「すごく怖いですよ。子どもは距離感がわからないのかな?と思えるけど、大人が平気でそれをやるんです。品出しが終わるのをじっと待っている子どももいるのに、おかしいです。早いもん勝ちみたいな神経の人がいるんですよ。
子どもが怪我をしたという店舗もすごく増えてきています。
ぶつかられた、蹴られた、押された。大人が群がるから子供たちが買えないって。当店でも、お客様同士のトラブルが起こるのではないかと怖れています」
現在は、Yさんが働く店舗では以下のようにルールを設けるように。
・土日祝の営業日には、新しいシールの品出しを行わない
・人気のシールは1人1点までの制限をつけて販売
ただ、売場にあるシール全種類を手に持って、どれにするか悩む人が出てくるという予想外のことも。「レジ奥に保管して販売するのが一番安全で多くの人が買える方法かもしれません」とYさん。
ブームに踊らされる人が多すぎる
Yさんが現場のカオスぶりをSNSで伝えると、同じように問題視する人が続出しました。
「私もシール販売員。勢いが怖すぎるし、疲れてしまって精神的に病んで1週間仕事休みました」
「文具取り扱いのある書店で働いていますが、書籍よりボンドロのお問い合わせが多い」
「長年シールを集めており、シール売り場に行くのが大好きだったのに…。ボンボン狙いだと思われるのが恥ずかしくて行けなくなりました」
「ブームが去ってから楽しもうね、と子どもと話しています」
中には、「人間の本性というか…、見たくないものや経験したくない人災」というコメントも。Yさんは「コロナ禍のマスクでも同じような体験をしているのですが、今回のブームはそれよりも酷い状況です。経験したくない人災、まさにそうです。人の嫌な部分を見るのに疲れてしまいました...」と返答。
売上が伸びるのは喜ばしいこと。ただ、「自分さえよければいい」と考える人たちや、ブームになってから加熱する人々の行動は目に余ります。
「昨今の流行りに対する日本人の熱量は、ものすごく高くなっていると感じます。ポケカやラブブ、ポケモンセットのおまけなども問題になりましたが、それと全く同じことがシールでも起こっています。
転売目的なのかサンタ需要なのか、大人が我先にと子どもを押し退けてまで買いにくるのはおかしいのではないでしょうか。
SNSでバズりたい欲に駆られてる人が多いのも苦々しいです。シールが本当に欲しいわけではなく、『シールを買えた"私"』になっているんだろうなと思わずにはいられません」
適度に楽しむのであれば全く問題ありません。
しかし、メルカリやヤフオクでは、シールの高額転売も横行。人気商品の取り扱い店の情報交換・情報収集を行うLINEのオープンチャットも立ち上がっています。あれば、あるだけ買って、数万使ったという人も珍しくありません。
「今一度自分の行動を振り返り、節度を持って、買い物をしていただきたい。子ども向けの店で子ども向けとして販売している商品ですから、子どもに手に取って欲しいのです」
■Yさん Threads @yasenakya_yabaizo