大統領選挙まで、残り3カ月の戦いとなった。ロイターが8月8日に公表した最新の世論調査によると、全米での支持率ではトランプ氏が37%、ハリス氏が42%と5ポイントリードする展開となり、ノースカロライナやペンシルベニアなど激戦7州を対象に行った世論調査でも、ハリス氏が37%、トランプ氏が34%と3ポイントリードしており、現時点ではハリス氏優勢の展開と言えよう。
一方、米国大統領選挙の行方によって世界情勢は大きく変わる可能性があり、世界各国の指導者たちがその行方を注視しているが、米国と対立関係にある国々の指導者たちはどういった思惑でそれを見ているのだろうか。
まず、プーチン氏はハリス氏がバイデンの後継候補となったことを快く思っていないだろう。トランプ暗殺未遂事件によって、選挙戦の流れはトランプ優勢に傾いていたが、トランプ氏はウクライナへの軍事支援を最優先で停止する、24 時間以内にウクライナ戦争を終わらせるなどと主張しており、実際に大統領に返り咲けば、ウクライナ支援は縮小、停止となる可能性が高い。そして、プーチン氏は、トランプ氏がロシア軍のウクライナ領土の一部占領が続く現状で終戦をゼレンスキー大統領に迫るシナリオを好意的に受け止めてきたので、今日の選挙戦の状況は面白くないだろう。
また、金正恩氏も似たような思いだろう。金正恩氏とトランプ氏はシンガポール、ベトナム、板門店と3回も米朝首脳会談を実現させ、米国との国交正常化、金体制の安全の保証を確約させたい金正恩氏にとって、トランプ政権はこれまでにないチャンスとなった。3回の首脳会談で金正恩氏が期待するような成果は生まれなかったが、バイデン政権は北朝鮮を事実上4年間無視してきたので、金正恩氏はトランプ政権が復活するシナリオを期待していることだろう。トランプ氏は最近の演説でも、自分が勝利することを金正恩氏も望んでいるだろうと主張するなど、北朝鮮政策を動かす可能性を示唆しており、ハリス氏優勢の状況は金正恩氏にとっても面白いものではない。
一方、米大統領選の行方を冷ややかな目で眺めているのが習近平氏だろう。残り3カ月の選挙戦で、トランプ氏とハリス氏は互いの批判合戦を展開していくだろうが、トランプ氏がハリス氏の対中姿勢を、ハリス氏がトランプ氏の対中姿勢を批判することはないだろう。すなわち、対立する両者ではあるが、対中姿勢という点では変わりがなく、どちらが勝利しても新政権の対中姿勢は厳しいものになる。習近平氏はそれを熟知しており、要するに中国にとって米大領選挙は何も期待できるものではなく、単なる政治的お祭りに過ぎないのである。習近平氏はプーチン氏や金正恩氏と違い、その行方を冷ややかな目で眺めていることだろう。