兵庫県豊岡市で理容店と鉄道模型のレンタルレイアウト店を営みながら但馬鉄道模型CLUBの代表を務める瀬尾雅昭さん(60)は、ジオラマ作りの楽しさを子どもに伝えたいという思いから毎年夏休みにジオラマ工作教室を開いている。同CLUBは2014年に発足したが、精巧なジオラマを見たある子どもの「どうやって作るの?ボクも作りたい」という一言がきっかけで2015年に初めて教室を開催、それ以来地域の子どもたちのために教室を続け、今年で10年目を迎えた。
今年の工作(ジオラマ)教室のテーマは「海岸」。子どもたちが持っているそれぞれのイメージが作品へつながる。海の部分が広い作品もあれば、砂浜にキラキラした飾りがついた作品もあり、どれを見ても同じ作品はない。瀬尾さんは言う。「あえて見本は見せないのです。見本を見せちゃうと、見本通りに真似して作ってしまう。子どもの独創性を大事にしたい」。
数年前にはこんなこともあった。山=緑という固定概念があるが、子どもたちが色付けした山は、ピンクや赤など緑だけではなかった。子どもになぜピンクにしたのかと聞いたところ、「おばあちゃんの所に遊びに行ったとき、桜がいっぱい咲いていたから」という答えが返ってきたという。大切な思い出が作品に反映されていた。
どうしたら子どもたちにもっと楽しんでもらえるか、講師メンバーたちで翌年のために必ず反省会をするという。鉄道模型は、日本で主流のNゲージ(軌間9ミリ、縮尺1/150)のほかHOゲージ(軌間16.5ミリ、縮尺1/87)など数種類あるが、車両だけでなく、レイアウトを作る際はそのサイズに合わせて建物や車、人までを同サイズで配置し、本物感を出す。瀬尾さんは、車両連結部の幌が既製品ではおもちゃ感が出るため、精巧なばね製の「SP幌」(https://maidonanews.jp/article/14561847)を商品化までこぎつけた人でもある。ただ反省会では「スケール(縮尺)感にこだわっているのは我々大人だけ」ということに気が付いたという。もっと子どもたちには正確な縮尺ではなく、伸び伸びと作ってほしいと、スケール要素は省略した。
目を輝かせて子どもたちが作品作りに没頭する姿が「何よりうれしい」と瀬尾さん。夏のジオラマ教室のために春先から準備をするが「今年もジオラマで使うレジン(透明な樹脂)がなく、冷や冷やしました」ここ数年は物価高や材料不足に苦労しているという。ただ、そんな苦労も苦にならないのは「「毎年参加してくれる子どもがいましたね。工作教室から“卒業”した現在も、大学生になって今度は教える側として来てくれています」とジオラマ作りの楽しさを次代へ引き継がれると確信しているからだ。
但馬鉄道模型CLUBの夏休み「工作(ジオラマ)教室」は7月に3日間の開催終え、8月は4日(日)但馬長寿の郷、19日(月)城崎地区コミュニティセンターで開催する。