女性飼育員を撮影する人も…鴨川シーワールドが悪質な動画投稿などを受け措置、一部時間の立ち入り制限を発表

小森 有喜 小森 有喜

千葉県鴨川市の水族館「鴨川シーワールド」は30日までに、シャチのパフォーマンス会場に入場できる時間を一部制限する旨の発表と注意喚起を行った。シャチのトレーニングの様子などを撮影して動画収益を得る行為がなくならず、また飼育員のプライバシーを侵害する動画やSNS投稿が相次いでいることを受けた措置だという。同館の広報担当者に、対応を決めた背景を聞いた。

同館では、繁忙期であれば1日に7回パフォーマンスが行われる日もある。これまでは最終パフォーマンス後から閉館までの時間も会場に入れるようにし、シャチのトレーニングの様子などを自由に見学・撮影できるようにしていた。しかし8月1日から最終パフォーマンス後は立ち入り禁止となり、撮影もできなくなる。

撮影した動画で収益得る人も…

広報担当者によると、ルールやマナーを守らない撮影者が「年々、右肩上がりに増えている」印象があるという。今回の発表文でも「当館の利用規約をお守りいただけない配信者の増加に伴う対処」と明確に記した。

同館がまず問題視してきたのは、トレーニングやパフォーマンス、飼育員の解説の様子などを動画撮影し「収益化した状態で」公開する行為だ。個人の思い出として撮影したり、思い出の共有として短編を投稿したりすることは全く問題ないが、収益が発生しているとみられるYouTubeチャンネルを運営している人への対応に苦慮してきた。

営利目的での撮影ができない旨などを館内掲示やパフォーマンス前のアナウンスで周知してきたが、状況は改善しなかった。該当の動画投稿者と思われる人物に声かけをしても「『私ではありません』と避けられることもあった」(担当者)。「本来であれば、当館に足を運んでいただいた方だけが見られるパフォーマンスなので非常に残念。飼育員が構成を考えてシャチに必死で種目を教えてつくりあげているパフォーマンスです。映画を撮影してそのまま流されているようなものですから、そうした認識は持っていただきたいです」

女性飼育員らへのプライバシー侵害も問題視

同館の飼育員には女性が多く、一部ではマナーの悪いファンによる撮影行為も散見される。シャチを全く写さず飼育員だけを撮影したり、パフォーマンスとは関係のない場面で事務所から出てきた飼育員を撮ったり、という行為だ。そうした写真を投稿し、接客で知った飼育員の名前をハッシュタグに付ける人までいるという。「(飼育員の)◯◯さんは名字が変わったから結婚したんだろう」といったコメントがついたこともあった。

「飼育員は動物の魅力を伝えたくてここで働いています。自分が目立ちたいわけではない」と担当者は強調する。「飼育員に魅力を感じるファンがいることは事実ですしそれ自体をやめてと言うつもりはありませんが、接客などで得た名前や個人情報をネットにあげるのはやめてほしい」とする。

これまではトレーニング中の様子も公開していたことで、飼育員の失敗の様子も動画に上げられることがあった。飼育員を応援する動画タイトルや趣旨であっても心ないコメントがつくこともあり、「トレーニングや健康チェックなど、カメラや人の目を気にせずやれる時間があれば飼育員にとっても動物にとってもやりやすいよね、というのが今回の決断の意図」と説明する。

発表文では、禁止事項として「①動物や他のお客様に危険が及ぶ方法での撮影」「②著作権侵害につながる撮影、ライブ配信、及び営利目的の撮影」「③撮影者と無関係なお客様及び特定の従業員のプライバシーを侵害する恐れがある撮影と公開」と具体的に明記した。担当者は「グレーな部分もグレーが強くなるとブラックになってどんどん規制しなければいけなくなってしまいます」「関係のない一般のお客様には申し訳ありませんが、ご協力よろしくお願いします」としている。

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