「有給休暇を使って、副業をする」なんて働き方はアリ? なんかずるい気がするのですが…【社労士が解説する現実とリスク】

長澤 芳子 長澤 芳子

2023年に総務省統計局が公表した「就業構造基本調査の結果」によると、非農林業従事者のうち副業がある者の数は、2017年の245万人から2022年には305万人に達しており、この5年間で60万人増加していました。副業をする人が増えるなか、ダブルワークならではのトラブルには気を付けなければなりません。

都内のIT企業に勤めるAさんは、2年前から会社の許可を得て副業をしています。ある日、昼休みにAさんは一緒にランチに出かけていたBさんに対して「副業の納期が厳しくて、明日は有給休暇を取得して副業をしっかりやらないと」と話します。

それを聞いたBさんは「有休中に副業するなんて、なんかずるいな」と言いました。確かに本業で有休を取得し、副業をすると両方から報酬を得ているようで、ずるいと思われるのも理解できます。

実際に有休中に副業をしても問題はないのでしょうか。社会保険労務士法人こころ社労士事務所の香川昌彦さんに詳しく聞いてみました。

ー有給休暇中に副業をしても問題はないのでしょうか

従業員が有給休暇中に副業をしていたとしても、企業側がその行為を制限することはできません。年次有給休暇は、心身の疲労を回復しゆとりある生活を保障するために付与される休暇です。

仮に副業で肉体労働をしていたとしても、従業員が「身体を動かすことで心身の疲労を回復していました」と言い張れば、企業は何もいえません。

ー有給休暇中の副業が問題になることはあるのでしょうか

大きく分けて2点の問題が考えられます。ひとつ目は合計の労働時間です。労働基準法では労働時間を「1日8時間、週40時間まで」と定めており、それを上回れば残業代として1.25倍の賃金を支払わなければなりません。

もしAさんが月曜日に有給休暇を取得して10時間働き、火曜から金曜まで、毎日8時間勤務したとすると、合計の労働時間は42時間になります。労働時間は本業と副業とで合算されるので注意が必要です。なお、副業の内容が業務委託であった場合は、この考えは適用されません。

もうひとつの問題は、有給休暇中の副業が原因で、体調不良やケガなどが発生した場合、本業に支障をきたしてしまう点です。本来、心身の疲労を回復するのが目的のはずの休暇をとっているはずなのに、副業で疲れ果ててしまっては、趣旨に反してしまいます。

本業の会社から、産業医の面談を勧められ、副業に関して気を付けるよう注意されることもあるでしょう。また、ケガなどの労災につながってしまった場合には、副業が原因といわれ、個人の過失扱いにされてしまうかもしれません。

いずれにせよ、有給休暇中の副業によって本業に影響が出た場合には、本業の企業から何かしらの注意や、罰則が与えられる可能性があるので注意が必要です。

ー双方から同じ日に有給休暇を取得しても問題ないのでしょうか。

本業、副業の企業から同じ日に有給休暇を取得しても問題ありません。ただし、有給休暇の意味は、もともと労働する義務がある日に対して、労働が免除されるというものです。つまり、双方から同じ日に有給休暇を取得する場面というのは、もともとどちらの企業も労働日に設定されていなければなりません。

言い換えれば、本業と副業がダブルブッキングになっている必要があります。そのような日はなかなかありえないと考えられるので、双方から有給休暇を取得する場面はほとんどないのではないでしょうか。

◆香川昌彦(かがわ・まさひこ)社会保険労務士 大阪府茨木市を拠点に「良い職場環境作りの専門家」として活動。ラーメン愛好家としても知られ、「#ラーメン社労士」での投稿が人気。

まいどなの求人情報

求人情報一覧へ

おすすめニュース

気になるキーワード

新着ニュース