音響業界の関係者が基礎技術を競う「マイクケーブル8の字巻きグランプリ」ケーブルがねじれない「8の字巻き」とは?

小嶋 あきら 小嶋 あきら

 マイクケーブルの8の字巻き、ご存知でしょうか。一般にはあまり知られていないと思われますが、音響関係のお仕事の方にとって、必要不可欠なスキルです。8の字巻きにスポットライトを当てるコンテストが大阪で開催されました。

そもそも「8の字巻き」とは?

 最近はヘッドホンもワイヤレスが多くなりましたが、コード付きを使っていた頃を思い出してください。くるくるっと巻いてカバンにしまったあと、また聴こうと思って伸ばしたとき。コードがぐるぐるねじれてイラッとしたこと、ありませんか?

 あれは巻くときに一定方向に巻いてしまって、コード自体がねじれることで起こります。シュッと引っ張ってクルクルさせて戻したりするのですが、例えばそれがもっと長くて太いマイクのコードの場合。ねじれを戻そうとぐるぐるしてしまう力はもっともっと大きくなりますし、また戻すのも大変です。それを防ぐための技が「8の字巻き」です。クルクル巻くときに、一回転ごとに順手と逆手を持ち替えて、内巻き外巻きと巻いていくのです。

 文章だけではなかなか伝わりにくいので、今回のコンテストのスタッフの浅原さんにお手本を披露してもらいました。さすがにプロの技。あまりに素早く簡単そうにするのでいまひとつわかりません。動画は1/2のスローにしてあります。

 イベントなどの後片付け、撤収の際にこの巻き方をしておくと、次に伸ばしたときにぐるぐるねじれない、そんな巻き方。まさに8の字巻きは現場のプロの必須のスキルなんですね。ちなみに消防用ホースなど長いものを扱う仕事でも、やり方は違いますが8の字巻きは使われています。8の字を描くように地面に置いていって最後に折りたたむ、というやり方も使われたりするようです。

撤収作業の際の技にスポットを当てたコンテスト

 8の字巻きにスポットを当てるという画期的なコンテストが「マイクケーブル8の字巻きグランプリ」。一般社団法人日本音響家協会の主催で、初回は2008年、大阪のオーク200で開催されました。その後は東京開催が続き、2023年には第9回大会が東京ビッグサイトであり、NHKの番組にもなりました。そして今回、15年ぶりに大阪・ATCホールに戻ってきたのです。

 競技ルールは、各回2人ずつ用意された長さ10メートルのマイクケーブルを2本、メス端子の側から8の字巻きで巻いて、その速さと確実さ、美しさを競うというものです。

 巻いてゴムバンドで留めて床に置くまでがタイムとして計測されます。また確実さ、美しさに関しては、例えば巻きの均一さ、仕上がった際のコネクター同士の近さ、さらには巻くときの姿勢や手の動きなども含めて、3人の審査員が各自50点満点でチェック。3人の合計点からタイムを引いた数値がスコアになります。

 午前の部は一般公募で20人が参加し、上位2人が午後からの決勝ラウンドに進みます。午後の部は各団体から推薦された4人とこの2人が技とスピードを競います。優勝賞金は10万円です。

大会の模様は

 ATCホールに入ってすぐ、エスカレーター横の会場。大勢の観客が見守る中、黙々とコードを巻き続ける参加者たち。独特な雰囲気の中、競技は粛々と進行。戦いを制したのは、予選から勝ち上がった高木駿太郎さん。特に巻きの美しさが評価され、僅差での勝利を収めたチャンピオンに話を聞きました。

 

−優勝した喜びを

「後輩と一緒に出てたので、賞金でおいしいものを食べようと思います」

−普段どんな仕事を?

「映像、音響の施工をしています。マイクケーブル以外にLANケーブルやHDMIケーブルなども巻いてます」

−コンテストに向け特訓は?

「やろうと思いながら結局できなくて、今日ちょっと早めに来て20分くらい練習しました」

−あなたにとって「8の字巻き」とは?

「普通に当たり前のことではあるんですが、うーん、難しいな。そうですね、基礎だと思います」

 

 仕事上で培われる、ローカルだけど大切な技術。普段目にすることのない8の字巻きという作業について掘り下げる、とても興味深いイベントでした。 

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