係長の上司「祖母が亡くなったくらいで、3日も休みやがって!」…まさかの手土産を請求!?…こんなに休むべきではなかったのか【社労士が解説】

長澤 芳子 長澤 芳子

身内に不幸があったときに取得できる「忌引き休暇」は、多くの会社で設定されています。ただ前もって予測できず急な休暇となってしまうため、時には社内で冷たい目で見られることもあるようです。

入社3年目のAさんも、忌引き休暇によって上司から思わぬ非難を受けたひとりです。Aさんは後輩からも頼りにされる優秀な存在でした。ただ彼の直属の上司である係長は、パワハラまがいな発言をする人物で、Aさんや周りの同僚は係長の暴言に巻き込まれないように日々警戒していました。

ある日、長年闘病生活を送っていたAさんの祖母が亡くなり、Aさんは社内規定通りの忌引休暇を取得します。無事に祖母の葬儀を終えて出社すると、Aさんのもとに係長がやってきて「祖母が亡くなったくらいで、3日も休みやがって! みんながフォローしてくれたからよかったものの…手土産のひとつでも持ってきたのか?」と大きな声で話しかけてきました。この発言に、大好きだった祖母が侮辱されたようにAさんは感じました。

係長が発したこの発言は、パワハラではないでしょうか。社会保険労務士法人こころ社労士事務所の香川昌彦さんに詳しく聞いてみました。

ーそもそも会社が設定している忌引き休暇を使うことは問題なのでしょうか

じつは、忌引き休暇は労働基準法で決められている休暇ではないため、会社には設定義務がありません。ただ、一般的には多くの会社が就業規則や雇用契約書で明記しており、従業員はそのルールに従って休暇を取得できます。

今回のケースでいえば、Aさんは社内のルールに基づいて忌引き休暇を取得しており、まったく問題ありません。

ー就業規則や雇用契約書に忌引き休暇の記述がなければどうなりますか

その場合は通常の有給休暇を取得することになるでしょう。ただ有給休暇の場合は、忌引き休暇と異なり、会社側に時季変更権という権利が認められています。これはその人の休暇が「事業の正常な運営を妨げる場合」に限って、取得時季を変更できるものです。

ーAさんが出社した際の係長の発言についてどう思われますか

弁護の余地はなくパワハラだと認定されるでしょう。就業規則上認められた権利を使った者に対して嫌味を言った係長は、訴えられたら負けると考えられます。仮にAさんが取得した休暇が、忌引き休暇ではなく有給休暇だったとしても同様です。

ーではAさんはどのように対応するべきでしょうか

2020年6月1日に施行された「パワハラ防止法」で、大企業に対してパワハラ対策のための相談窓口設置が義務化されました。さらに2022年4月1日にはその義務が、中小企業にまで拡大されています。

Aさんが勤務している会社に相談窓口があれば、そちらに相談するのがいいでしょう。その際に、係長にどのようなことを言われたのかなど聞かれるので、メモなどで証拠を残しておくことをおすすめします。相談窓口が双方からヒアリングをおこなった結果、会社の人事に報告が入り、然るべき対応がとられるかと思います。

もし相談窓口がない場合には、職場のトラブルについての相談に対応したり、情報を提供している総合労働相談コーナーの活用を検討するといいでしょう。総合労働相談コーナーについては、厚生労働省のサイトに詳細が掲載されています。法律違反の疑いがある場合には、労働基準監督署等に取り次いでくれます。

◆香川昌彦(かがわ・まさひこ)社会保険労務士 大阪府茨木市を拠点に「良い職場環境作りの専門家」として活動。ラーメン愛好家としても知られ、「#ラーメン社労士」での投稿が人気。

まいどなの求人情報

求人情報一覧へ

おすすめニュース

気になるキーワード

新着ニュース