“市長にカンチョー”イベントを実行した市幹部が早期退職

広畑 千春 広畑 千春
参加者から「“エア”カンチョー」を決められる神戸市の久元喜造市長=神戸市内
参加者から「“エア”カンチョー」を決められる神戸市の久元喜造市長=神戸市内

 神戸市の久元喜造市長が2月に行われたイベントに出席、そこで子どもやヘンな大人たちに、「カンチョー」をされるシーンがあった。衝撃のその光景を目の当たりにした記者は「こ、これは…市長にカンチョーをするとは大丈夫なのか…」と肝を冷やした。よくよく聞いてみれば、主催者のNPO法人の理事長は、同市区役所の幹部だった。あれから1カ月あまり経った後、その幹部を訪ねたところ、3月末で早期退職するという。「やっぱり、アレが原因だったのですか…」と質問した記者に、幹部の答えは-。

 イベントを企画したのは、同市のNPO法人umidas(ウミダス)耕作所。理事長は同市須磨区役所保健福祉部長の衣笠収さん(55)が務め、ハゲヅラを被った大人たちがヘンテコな音頭に乗せ、南京町やメリケンパークといった神戸の観光スポットを行脚する動画を公開するなど、「日本一くだらないNPO」を全力で目指すという。

 実は、神戸市は2017年4月から、経験をさまざまな施策に生かそうと、職員が一定の報酬を得てNPO法人などで働ける全国的にも珍しい制度を導入した。衣笠さんもそれを使い、終業後や休日に地元のアーティストや子育て中の母親らと交流する中で、昨年夏、法人を立ち上げた。

 件のイベントは2月にあり、「正しいことやルールの象徴たる市長に対し、くだらなさで挑む」という趣旨だった。久元市長はスーツ姿で公務の合間を縫って現れ、テンション全開の大人や走り回る子どもたちと手をつないで輪になって踊った後、全員から「“エア”カンチョー」を決められた。

 「もう何が何だか訳分からんなぁ」と漏らした久元市長。「カンチョーなんて、いつ以来ですか?」と記者が聞くと、「そんなん、したことないよ」と苦笑しつつ、「公的な、真面目なものに距離を感じる人も多い。いつでも誰でも緩やかにつながれ、つながれなくても構わない。そんな関係性を常に開いておくことは、コミュニティーにとって大切」と完璧なコメントを残し、さっそうと会場を後にした。

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