Xに恋愛四コマ漫画を投稿する世紀末さん。ささやかで幸せな恋人との瞬間や、嫉妬や不安な場面を切り取った作品は読者の共感をよび、フォロワーは22万人。
すでに投稿されていた恋人との同棲生活を描いた四コマ漫画に、描きおろしを加えた新刊「ミカコときょーちゃん」(KADOKAWA)が発売されると、読者から「なんでこんなに刺さるんだ」「ボロボロ泣きながら読んだ」との声が。
全てが繋がると、きょーちゃんの死、喪失感を抱えながらも生きるミカコ、今までXにポストされていた恋人同士の日常は、二度と戻らない思い出であったことが判明します。どのように作られたのか、作者である世紀末さんにお話を聞きました。
――とても癒される漫画だと思ってました。
世紀末:今回の本の大きなテーマに生活があります。 とにかく生活を続ける、何があっても、2人じゃなくなっても、それでも生活は続いていくということが本で伝わればと思い描きました。
――単行本で読むと、きょーちゃんを失ったミカコの抱えきれない孤独を感じます。
世紀末:私の漫画には喪失や死がありますが、それで世界は終わりじゃないということを本では伝えたいと思っています。読み終えた時に、ほんの少しの光や優しい風を感じてもらえたらと願っています。
――作品はどのように発想して生まれるのですか?
世紀末:SNSの投稿は本当に私が思いついたものを衝動的に描いて載せています。私の本の作り方は多分普通の漫画家とだいぶ違って、私が描いた順に送り付ける原稿を、編集担当さんが時系列などを考え並べるというパズルのような作業をしていただいてます。
SNSではバラバラだった4コマが、実は1本の長い線だったら面白いと思って。ただ私1人で繋げる力がないので、編集さんやデザイナーさんの力がとても大きいです。でもたくさんの人が関わっているからこそ本というかたちが好きで大切です。
――どんな方に読んでもらいたいですか?
世紀末:孤独を感じている人に読んでほしいです。孤独を感じたことのない人はいないと思うので、どんな人にも読んでほしいです。本を読んでる間はみんな1人です。本は静かにただそこにあるだけで、触れたい時に触れることができます。私は家で1人どうしようもなく孤独になると自分の本棚の前に行きます。私以外の誰かの、そんな時に手に取る本になれていたら嬉しく思います。
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「『ミカコときょーちゃん』は読み終えたあと、本体カバーを外してドキッとしてもらいたいです。 そういうことができるのも紙の本ならでは。電子もいいのですが私の本はカバーも素敵に加工していただいてるので、ぜひ触って紙の気持ちよさを感じてほしいです」と世紀末さん。ただ電子は電子で特典イラストと漫画がありますので、そちらもオススメです。
SNSで一話ずつ投稿された日常系恋愛漫画は全て伏線と言っても過言ではなく、一冊にまとまると突然読者の胸を貫く仕掛けが。SNSには毎日数えきれないほどの漫画が投稿されますが、改めて「本にする大切さ」が分かる作品であると感じます。SNSと書籍、両方読んでも新鮮に楽しめる仕掛けが盛り込まれた、新たな漫画の可能性を発見しました。
世紀末 X
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