消えたアメニティライナー JR京都線・神戸線から撤退した白い221系 「床上はすべてお客様のための空間」がコンセプト

新田 浩之 新田 浩之

JR京都線・神戸線沿線の方でしたら、「最近、快速に使われている白い電車見ないなあ」と思いませんか。実は2024年3月のダイヤ改正により、白い電車すなわち221系はJR京都線・神戸線の本線運用から撤退しました。登場から35年にわたり活躍してきましたが、実は221系には「アメニティライナー」という愛称が付けられていたのです。

アメニティライナー221系が目指した車両像

221系が登場したのは国鉄民営化から2年後の1989年のことです。当時、快速列車には片側3扉直角ボックスシートの113系、新快速には片側2扉の転換クロスシートの117系が使われていました。

221系は両車を組み合わせる形で片側3扉の転換クロスシートを採用しました。現在ではさほど珍しくない片側3扉の転換クロスシート車両ですが、先駆けは1988年登場の近鉄5200系、JR北海道721系でした。

コンセプトは「床上はすべてお客様のための空間とする」に決定し、車内端の配電盤を床下に配置することに。その結果、3扉でありながら、117系の定員は変わることなく、117系と同じシートピッチ(前後間隔)の転換クロスシートを配置することに成功しました。

また、天井を高く床下を低くし、車内空間を広くした点も特徴のひとつです。窓を大型化し、主電動機や空気圧縮機の低騒音化も実現。今日のJR西日本の新車にも共通する「明るくて静かな車両」になりました。

ところで、221系が目指した方向性はラッシュ時には「リラックスできる通勤時間」、データイムには「ハイグレードな居住空間」、行楽時には「楽しさあふれる快適性」を提供できる車両、でした。

先述の通り、221系には「アメニティライナー」という名称が与えられました。「アメニティ」は日本語に訳すと「快適さ」という意味です。残念ながら名称自体は乗客の間に定着せずでしたが、上記の目標を凝縮したワードといえます。

一方、検討されながら実現しなかった設備もあります。それが公衆電話です。221系が登場した頃はカード式公衆電話が普及し始めた時であり、現に阪急特急6300系、京阪特急8000系を備えていました。

221系も公衆電話を設置準備を進めていましたが、携帯電話が普及も進んだことから、結局は設置されませんでした。

221系は1989年に登場し、新快速と大阪~奈良を結ぶ「大和路快速」に導入されました。以降、ほとんどの新快速が221系に置き換わりました。

全盛期は長く続かず

しかし、221系全盛時代は長くは続きませんでした。1995年には時速130キロ対応の223系1000番台を新快速に導入。2000年に新快速のオール時速130キロ化に伴い、221系は定期の新快速運用から撤退しました。

以降、JR京都線・神戸線の221系は専ら快速運用に就き、新快速のサブ的車両として頑張っていました。近年は225系の導入により、JR京都線・神戸線からの転属が進んでいました。

先述したように2024年3月ダイヤ改正を持って、221系はJR京都線・神戸線から撤退しました。しかし、すぐに本格的な廃車が進むとは考えにくく、他線区に転属し、201系などの国鉄型車両を置き換える予定です。

いずれ221系は廃車になるでしょうが、JR西日本の基礎を作り上げた車両として名車にリストアップされることでしょう。

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