社会的地位の高い職業の代表格として「医師」をあげる人は多いでしょう。医師になるには医科大学や大学医学部などで、6年間の医学教育を受け、国家試験に合格しなければなりません。
ただこの6年間の教育課程にかかる費用を理由に、医師になる道を断念する人も少なくないです。では、実際に6年間の大学教育で必要となる費用や、求められる親の年収はいくらなのでしょうか。
まず国公立大学と私立大学とで、6年間で必要な学費は大きく異なります。国公立大学の場合、6年間でかかる学費は入学料を含めて約350万円です。一方、私立大学の場合は約1800万円から約4700万円であり、国公立大学と比べると多額の学費が求められます。年平均での単純計算は約300万円から約800万円ですが、大学受験費用や納付金、教材購入費なども考えると大学受験開始までに約150万円から200万円前後は必要です。
仮に最も学費の高い大学(約4700万円)に進学する場合、親はどれくらいの年収が必要でしょうか。もし子どもが生まれた直後から、入学までの18年間でこの費用を貯めようとすると、約260万円を毎年貯金する必要があります。
金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](2023年)」によると、年間の手取り収入からの貯蓄割合は、高年収になるほど高くなる傾向です。年収が750万円から1000万円未満だと、平均貯蓄割合は14%、1000万円から1200万円未満だと18%、1200万円以上だと19%でした。
この貯蓄を大学進学のための貯金260万円に全額使用すると想定した場合、無理なく毎年260万円を貯められる年収は、1400万円以上ということが分かります。しかし、必要な費用はこれだけではありません。
たとえば、入学した大学が自宅から遠い場合はどうなるでしょうか。全国大学生協連が発表する「第59回学生生活実態調査(2023年度)」によると、下宿する大学生の一人暮らしの1カ月の平均生活費は約12.7万円です。年間だと約150万円が必要となります。子ども自体がアルバイトなどである程度賄うケースもありますが、仮に親が全額仕送りする場合は、この生活費も同時に貯金する必要があるのです。
また、大学に入学するためにはお金だけでなく、相応の学力も必要です。この学力を身に付けるための予備校や塾を使う場合は、教育費として年間平均で36万から45万円円、高校3年間使う計算で考えると約100万から150万円が必要と想定されます。さらに医学部を専門にした予備校や塾を利用する場合は、さらに金額は上がるでしょう。
このように、もし子どもを将来医者にしたいと考えるのであれば、長期的な資金計画が必要だと分かります。たとえば学費用に長期積立や学資保険を利用するなど、無理なく学費を用意できるように早めに準備していきましょう。