動物園や水族館で、保護者と子どもに向けて「勝手に餌を与えないで」とか「柵の上に子どもを乗せないで」といった注意書きを見かけることがあります。大抵、子どもにも分かるように、ひらがなで書かれているものもたくさんあります。
しかし、Xアカウント・ぎーのさん(@OnoRuaRima_262)がXにポストしたのは、「大人の方へ…」という掲示板でした。何が書かれていたのでしょうか。
この掲示板が設置されているのは、北九州市立水環境館の爬虫類コーナー入り口。
「お子様(特に未就学の幼児期)は、保護者の方が『気持ち悪い』と言うと、その価値観がずっと植え付けられてしまうことがあります」
「お子様はヘビを見て、『かわいい』『かっこいい』と思っているかもしれません」
「生き物が持つ力強さを感じたうえで、お子様自身から出てくる感情を大切にしてあげてください」
と書かれています。
ポストを見た人からは大きな反響があり、さまざまなコメントが寄せられました。
「うちの娘はなんでも怖がる。俺も妻もなんでも触れるし、怖いとか気持ち悪いとか言ったことないのに…なぜ…」
「子どもの頃ヤマカガシ振り回して小学校に登校して、大問題になった。カッコイイのに…。まだまだヤツが無毒と言われてた時代だったが」
「じゃあ何て表現したらいいのかなーと前向きな議論になるといいなぁ…」
「こういう感覚のせいでジャポニカ学習帳の昆虫がなくなっちゃったんだよな…私も昆虫苦手だけど、あれを美しいと思って研究者になったりする人もいるんだからさ、好き嫌いで多様性をぶっ潰すのはそろそろやめない?」
ぎーのさんはにもお話を聞きました。
ーー掲示板を見てどう思われましたか。
「あくまで私個人の意見なのですが、小さい子どもはまだ自分の世界が狭く、大人(特に、保護者など普段から関わりのある人)の意見に影響されやすいと思います。子どもの時に作られる価値観は、大人になってもなかなか変わることがないと思うので、子供の素直な気持ちを大切にしてほしいと思います」
ーーぎーのさんのご両親はいかがでしたか。
「小さい頃から両親に、自然とふれあう機会をたくさんつくってもらいました。海洋生物に興味を持ち始めた時期ははっきり覚えていないのですが、気がついたら好きになっていました。先入観を植え付けられることもなく、両親は私がしたいこと、やりたいことをたくさんさせてくれました」
ーーヘビについてはどう思いますか。
「普段はあまりヘビを見ないのですが、こちらをジッと見つめている姿には凛々しさを感じます。また、ヘビを祀る神社もあるので、神秘的だと思う人もいるのではないでしょうか」
「展示を見ながら『気持ち悪い』と言う人はいる」
北九州市立水環境館の方にもお話を伺いました。
ーーヘビを「気持ち悪い」と言ってしまう人がいるのでしょうか。
「よほど苦手な方は展示室に入られませんが、 展示を見ながらおっしゃる方は、(年齢問わず)体感として2割程度おられます」
ーー未就学(幼児期)ですと、保護者の影響を受けやすいのですか。
「感情や感覚は後天的な学習による部分が大きいようです。ただ、気持ち悪いという感情だけでなく、 公共施設でまわりにも他の方がおられる状況で、『気持ち悪い』と大声を出すと、お子さんが真似をするようになるかもしれません。感情や感覚、 立ち居振る舞いや言葉遣いなどは、特に小さなお子様の場合、保護者や周りの大人たちの影響は大きいと思います」
ーー人はなぜヘビを「気持ち悪い」と思うようになるのでしょうか。
「学習による部分が大きいかと思います。ゴキブリが気持ち悪がられてカブトムシが人気なのも、 人に備わった本能(現在では多くの学問では本能という言葉はほぼ使いません)ではなく、 後天的な事由によるものと思われます。カブトムシが家の中に出てきて素早く動き回っていたら、同じように不快害虫とされていたはずです」
ーーマムシなどの危険性は、どう伝えたらいいと思われますか。
「もちろん教育は必要です。爬虫類の展示室には、解説パネルなどを設置していますが、そこに『野生のヘビを見つけても触らないこと』と記載しています。ヘビは模様や色彩の変異も多く、また無毒の種であっても口内に雑菌を持っていますので、腫れたり痛みが続くこともあります。むやみに触らないようにという心がけは非常に大切です。ただし、気持ち悪いという『価値観』と毒があるから避けるという『知識』は別の問題です。今後も引き続き啓発を続けます」
最後に担当者は、ヘビの魅力を教えてくれました。
「鱗の光沢やパッチリした目などに惹かれます。また、正面から見ると可愛らしい顔をしているんですよ」