「東野交差点の南北に渡る横断歩道が無いのはなぜですか」。京都市山科区の高齢男性から京都新聞の双方向型報道「読者に応える」に山科区東野の交差点に関する投稿が寄せられた。東野といえば確かに交差点付近には南北の横断歩道はない。歩行者や自転車は地下鉄東野駅につながる地下通路を歩いて交差点の東西南北に出ることになる。男性に話を聞くとともに、京都国道事務所に取材した。
投稿したのは金属加工業土井吉治さん(74)。土井さんは「エレベーターが付いているとはいえ、待って乗って降りてを繰り返さないといけない。平面ではあるが地下通路を歩くと距離が長くて息切れがする」と訴える。
実際、東野交差点はどうなっているのか。南北の外環状線と東西に走る国道1号が交わっており、非常に交通量の多い場所だ。京都国道事務所によると、東野交差点付近の国道1号は1日約5万台の通行量があるといい、京都府を東西に貫く大動脈だ。
地上には交差点から100メートルほど北側に東西の横断歩道が1カ所あるのみ。ほかの場所にはない。地下は「東野駅地下横断歩道」となっており、交差点の周囲には緩やかな勾配の階段とともに地上と地下を結ぶエレベーターが5基設置されている。
地下横断歩道を管理している国土交通省京都国道事務所に横断歩道がない理由と経緯を尋ねた。地下横断歩道が最初にできたのは1997年10月。地下鉄東西線の東野駅開業に合わせて、北側部分のみ先行して利用が始まった。その後、2005年2月に全体が完成したという。
同事務所によると地下横断歩道ができる以前、東野交差点に南北と東西をつなぐ歩道橋があった。しかし、地下歩道の利用開始後に歩道橋は撤去となった。
歩道橋時代、自転車は通れなかった。現在の地下歩道は階段の横にスロープが設置されており自転車も通行可能だ、と同事務所は説明する。つまり自転車利用者の利便性は歩道橋時代より向上しているといえそうだ。
では土井さんが求める横断歩道の設置予定はあるのか。京都国道事務所の西田靖志副所長は「現時点では設置予定はない」とする。さらに「地下横断歩道は歩行者や自転車の利便性と安全性のため設置している。エレベーターを使って地下歩道を利用してもらいたい」と呼びかける。
投稿者の土井さんは「歩行者の安全性というが、道路に横断歩道を付けないのは車優先の考え方ではないか。国の担当者も一度、地元に住んで高齢者がどれだけ苦労しているか知ってほしい」と切望している。