不妊・不育症治療と仕事の両立させるには 4割が「働き方を変えた」

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NPO法人Fine(東京都江東区)は、このほど不妊治療・不育治療を受けている(受けたことがある)1067人を対象とした「仕事と不妊治療の両立に関するアンケート2023」の結果を発表しました。その結果、仕事と不妊や不育症治療の両立が困難で、約4割の人が「働き方を変えた」ことが分かりました。また、治療歴が長いほど、「働き方を変える」人が多いことも分かったそうです。

調査は2023年6月~8月の期間にインターネットで実施されました。

調査によると、「仕事と不妊や不育症治療の両立した経験がある」人は全体の95%。そのうちの39%が「両立が困難で働き方を変えた」と回答しています。

「両立が困難で働き方を変えた」と答えた387人に、どのように変えたのかを聞くと、多い順に「退職」(39%)、「転職」(16%)、「休職」(14%)という結果になりました。さらに、「退職」を選んだ人の割合を就業形態別にみると、「個人業務請負」(80%)が最も多く、次いで「派遣社員」(60%)、「パート・アルバイト」(46%)が続きました。また、業種別では、多い順に「建設業」(50%)、「教育、学習支援業」(45%)、「卸売業、小売業」(44%)となっています。

不妊や不育症治療の期間別に「仕事と不妊や不育症治療との両立が困難で働き方を変えた」と答えた割合をみると、最も多かったのは「10年以上」(84%)、次いで「5年~10年未満」(59%)、「2年~5年未満」(43%)と続いた一方で、「働き方を変えたことがない」人では、「1年未満」(85%)、「1年~2年未満 」(68%)などが上位となり、治療歴が長いほど、働き方を変える人が多いことが明らかに。

「働き方を変えたことがある」人を就業形態別でみると、「内職」(100%)、「パート・アルバイト」「会社役員」(いずれも67%)などが多くなったほか、業種別では、「運輸業、郵便業」(52%)、「農業、漁業、林業、水産業」(50%)、「医療、福祉」(48%)などで多くなりました。

仕事と不妊や不育症治療の両立のために働き方を変えざるをえなかった時の気持ちについて回答者からは以下のようなコメントが寄せられています。

▽最初は理解を示してもらえても、長期間になると難しい(30~34歳女性)
▽「まだいない赤ちゃんのために周りに迷惑をかけすぎ」と注意を受けた(30~34歳女性)
▽責任ある立場で体調不良ではなく治療のために急に休むことがストレスだった。職場の理解はあるが、自分自身でスケジュール通り思うように両立できない(35~39歳女性)

続けて、「職場で”不妊や不育症治療”について周囲に話していましたか」と聞いたところ、65%が「話していた」と回答。その一方で、81%が「職場で”不妊や不育症治療”をしていることを周囲に話しづらく感じた」と答えています。

「周囲に話しづらく感じた理由」を複数回答で答えてもらったところ、「不妊や不育症であることを伝えたくない」(68%)、「妊娠しなかった時、職場にいづらくなりそう」(57%)、「不妊や不育症治療に対する理解が少なく、話してもわかってもらえなさそう」(53%)などが上位に挙げられました。回答者からのコメントは以下の通りです。

▽まだまだ不妊治療に対する偏見も強い。「そんな不自然な方法で子ども作るの怖くない?」など、こちらの心情も事情も無視した言葉を一方的に浴びせられることもあった(30~34歳女性)
▽妊娠している人が上司からマタハラ発言を受けていて、不妊治療中であることを会社に伝えたくなくなった(30~34歳女性)
▽休暇や早退が多くなるため話さないわけにはいかないが、陰で噂されたり、好奇の目で見られたり、本当につらかった(45~49歳女性)
▽不妊症についての正しい認識が周りにはなく、性交すれば必ずできるもの=夫婦不仲なのではと誤解されたり、話しても無意味だと感じるくらい無神経な人がいた(35~39歳女性)
▽どこまで話していいものかわからない。相手も反応に困るのではないかと思った(30~34歳女性)

そこで、「職場に、不妊や不育症治療をサポートする制度等がありますか」と聞いたところ、「ある」と答えた人は20%に留まりました。なお、サポートがある業種は「電気、ガス、熱供給、水道業」(43%)、「教育、学習支援業」(34%)、「運輸業、郵便業」(33%)などが挙げられています。

また、職場に不妊や不育症治療をサポートする制度等について、「使わなかった(使おうと思わない)」と答えた人は40%。その理由としては、「不妊や不育症治療をしていることを知られたくない」(63%)が最も多くなりました。

また、職場に不妊や不育症治療をサポートする制度があると、「異動」や「休職」を選択する割合はともに34%で、「退職」(7%)や「転職」(11%)より多いことが判明。

「不妊や不育症治療をサポートする制度で職場に望むこと」を複数回答で答えてもらったところ、「休暇・休業制度(不妊や不育症治療が病欠・休職、有給扱いにされるなど)」(77%)、「就業時間制度(不妊や不育症治療による時短・フレックスタイム、正規からパートタイムなど雇用形態の一時的な変更が認められるなど)」(72%)、「不妊や不育症治療費に対する融資・補助」(52%)などが上位となりました。

在宅ワークができることにより、「不妊や不育症治療への取り組み方に変化がある」と答えた人は90%。具体的な変化としては、「仕事と治療の時間調整をしやすくなった」(84%)、「リモートワークだったので、病院の待ち時間に仕事の対応ができた」(17%)、「採卵後や服薬の副作用があった時など、体調不良の際も自宅で体を休めながら仕事ができた」「精神的な負担が減った」(いずれも16%)などの声が挙がりました。回答者からのコメントは以下の通りです。

▽診療の待ち時間に仕事ができるため、治療を理由とした休みが減った(35~39歳女性)
▽通勤のストレスがない。(不妊にストレスは大きい)(40~44歳女性)
▽早退がしやすくなった(40~44歳女性)
▽採卵翌日などまだ動くと腹痛が強い場合でも、在宅ワークで(仕事が)できることにより欠勤せずに1日働くことができる(35~39歳女性)

また、「国や社会に対して望むこと」について寄せられたコメントは以下の通りです。

▽生理のこと、妊娠の仕組みや適齢期などもう少し具体的に学校教育の段階から男女ともに共通認識として持てるような教育が必要と感じる(30~34歳女性)
▽子どもがいないことで切ない、苦しい、悔しい思いをしながらも、がんばっている女性がいることを知り、認めて欲しい(35~39歳女性)
▽もっと不妊治療への理解を広げてほしい。就活をしているが、不妊治療のことを話すとほぼ門前払い(35~39歳女性)
▽不妊治療で休む社員へのサポート体制の例を紹介してほしい。就業規則への記載を促してほしい(35~39歳女性)

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