不妊治療でも子供は授からず…迎えた2匹の子猫 「私と夫をかーちゃんととーちゃんにしてくれた」

渡辺 陽 渡辺 陽

倉庫で生まれた2匹の子猫

そらちゃんとうみちゃん(4歳・メス)は、2018年5月27日、とある倉庫で野良猫が産んだ猫だった。会社の人は母猫が不安にならないように、倉庫の中に囲いをして、ごはんや水、トイレを準備して、安全に子育てができるようにした。母猫はしっかり子育てをして、授乳も終わり、子猫たちはトイレもできるようになった。

同年6月中旬、千葉県に住むSさんの夫は、仕事でその会社に行った時に2匹の話を聞き、すぐに見に行った。その後何度も猫の写真や動画を見せてもらい、7月、Sさんも子猫たちに会いに行ったという。子猫たちは生後1カ月半くらいで、かなり活発にじゃれあい、追いかけっこをしていた。

「とにかく可愛くて、愛おしくて、なんとも言えない感情を今でも覚えています。2018年7月22日に迎えました」

長く続いた不妊治療などのストレス

Sさんは子供の頃から猫が好きで、ずっと飼いたいと思っていたが、両親に反対されて飼えずにいた。その後、成人してから都内で一人暮らしをするも、今度は夜遅くにしか帰宅できず、帰っても寝るだけの毎日。とても猫を飼える環境ではないと思っていた。結婚後も猫を飼いたいと思っていたが、住んでいたのはペット不可のマンション。不妊治療をしていたこともあり、なかなか猫を飼うという夢は実現しなかった。

子どもがいないため身内から心ない言葉を投げかけられることもあり、不妊治療を続けていたが、40代半ばになり、子どもを授かることはあきらめたという。

「結婚後、知らない土地に移り住んで、でもそこの環境に慣れることができず、仕事も変わり、友人とも離れて暮らしていたのでストレスを感じていました。そのことや猫を迎えたいという思いを主人にぶつけ、やっと別の土地に引っ越すことができたのです。その半年後、そらとうみに出会ったのです」

猫が好きとはいうものの、猫を飼うのは初めてで、Sさん夫妻は「一度に2匹迎えて大丈夫なのか」と悩んだ。しかし、2匹を引き離すことの方が辛くて、一緒に迎えることにしたという。

かーちゃんととーちゃんにしてくれた

そらちゃんはおっとりした性格。とーちゃんっ子でうみちゃんのことが大好きだ。うみちゃんはお転婆でかーちゃんっ子。お姉さん気質で、そらちゃんが知覚過敏のため行動に異変をきたした時は、心配しすぎてお腹を壊し、頭にハゲができた。

Sさん夫妻はすっかり猫中心の生活になったが、とりわけ驚かれるのが玄関まで土禁だということだ。外出先から帰宅したら、用意してある箱に直接靴を脱いで、すぐ棚の上に片付ける。

「滅多に人が来ることはないですが、友人やマンションの設備点検や掃除の人が来ると、大きなレジャーシートを敷いて、『猫ちゃん優先で土禁なので、このシートの上で靴を脱いでください』とお願いしています」

Sさんは2匹が生まれてきたことに感謝しているという。

「双子のかーちゃんになれた幸せという言葉しかありません。そらとうみが、私と夫をかーちゃんととーちゃんにしてくれました」

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