「犬のことを考えてくれる人に初めて会った」 支援スタッフの言葉に飼い主は涙をぬぐい前を向いた 「みんなの前ではシャキッとしないと」

松田 義人 松田 義人

元日に発生した「令和6年能登半島地震」。被災者の避難生活が続いていますが、特にペット同伴の被災者の場合、避難所に入れないケースも多く、寒い中でペットと一緒に車中などで避難生活をしている人もいます。

状況が落ち着くまで「ペットの一時預かり」をスタートさせたのがピースワンコ・ジャパン(以下、ピースワンコ)のペット支援チーム。ペット同伴で避難生活をおくる人たちに代わって、大切なペットを状況が落ち着くまで一時的に預かるという支援です。他の団体との連携もスタート。犬だけでなく猫も積極的に預かることに決め、団体の垣根を超えた支援活動を続けています。

一方、「ペットの一時預かり」に頼らず「自分がペットと一緒にいたい」という被災者もいました。この方は14歳のトイプードルと車内での厳しい避難生活を余儀なくされていましたが、「一時預かり」を頼まないのには理由がありました。

「『今後何かあったら』と思うと離れられない」

この飼い主と一緒に避難したワンコは、糖尿病のため食事の管理とインスリン注射の治療が必要でした。聞けば「獣医師から『あと数年しか生きられない』と言われたが、14歳まで生き延びている」と言います。被災して何日かはワンコがエサを食べられなくなり、注射もできないことから心配していたそうですが、その後は食べてくれるようになったとも。

飼い主はこう語りました。

「この子を看取ったら次は保護犬を迎えようと思っていたが、被災犬になってしまった。この子にすごく助けてもらったし、『今後何かあったら』と思うと、とても離れられない。先のことをいろいろ考えると、いつかは(預けることを)決断しなければとは思うが…」

「犬のことは誰にも相談できなかった」

飼い主の気持ちに寄り添って考えれば、この状況での「ペットの一時預かり」へ決断に至らない気持ちはよくわかります。ペット支援チームスタッフは、「できる限りの支援ができればと思っていますので、また何か困りごとがありましたら遠慮なく連絡ください」と伝え、そのワンコへのペットフード、おやつ、マットなどの物資を渡しました。

飼い主さんはその言葉に目頭を熱くなり、こうも言ってくれました。

「たくさんの人が困っている中で、いろんな考えもあるだろうから、犬のことはなかなか相談できなかった。人間のお医者さんは来てくれても、犬の健康まで考えてくれる人には初めて会った。自分のこと以上にありがたい」

飼い主は同じ被災者に対して炊き出し支援を行っているとのこと。涙を拭いながらこうも言いました。

「あっちに(避難所)戻ったら、みんなの前ではシャキッとしないと」

「被災者とペットに寄り添い必要な支援を」と団体スタッフ

余震が続くなど、予断を許さない状況の中、2次避難も始まっています。

この状況を前に支援活動を続ける「ペット支援チーム」スタッフは語ります。

「多くの人が被災し、厳しい避難生活をおくっているなか、ペットのことを相談できない方もいるかもしれません。しかし、飼い主さんにとってはペットもかけがえのない家族であり、守るべき命であることには変わりません。どうか必要なことがありましたら、私たちに連絡をください。ペットと同伴で避難生活をおくっている方々に寄り添い、必要な支援をしていきたいと思っています」

ピースワンコ・ジャパン
https://peace-wanko.jp/

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