2月からプロ野球のシーズンが開幕、今年も阪神にはドラフトで6人、育成ドラフトで2人の8人の新人が入団した。
1巡目指名は青山学院大学の下村海翔投手。福岡県の九州国際大付高出だが、出身は兵庫県西宮市で甲子園球場のおひざ元だ。「下村」という名字は文字通り「下の方の村」という意味で各地にある。
ただし「下」というのは標高が低い、ということだけではない。舞台では客席から見て右側を「上手」と呼ぶように、実際の高さとは関係なく「上下」を使って方向をあらわすことがある。
川が流れていれば、その上流方向が「上」で下流が「下」。この場合はまだ標高とも一致しているが、道の場合はその地域の中心に向かうのが「上」で、その反対が「下」となり、実際の標高とは関係がない。
名字的には、2巡目指名で入団した椎葉剛選手に注目したい。社会人のミキハウスに3年間在籍したものの1試合にしか登板できなかったが、昨年独立リーグである四国アイランドリーグの徳島インディゴソックスに入団すると、1年目に独立リーグ出身としては最高タイの2巡目で指名された。
椎葉選手は長崎県の島原中央高の出身。ただしこちらも野球留学で本来の出身地は大阪府堺市だ。
この「椎葉」という名字には大きな特徴がある。それは、名字のルーツが宮崎県椎葉村で、現在でも圧倒的多数が宮崎県にあるということだ。それだけではない。宮崎県内でも椎葉村付近に集中しており、椎葉村では村で一番多い名字が「椎葉」である。つまり、自治体名とその自治体で最も多い名字が一致しているのだ。
そんなのは珍しくないだろう、と思うかもしれない。しかし、平成の大合併で全国の自治体は激減、今や村は稀少で県内には村は存在しないというところもある。またどの自治体もかなり広域となり、「〇〇村では△△さんばかり」というのは昔話になりつつある。もちろん、集落(大字)単位でみれば特定の名字が激しく集中しているところはたくさんあるが、「町」や「村」という行政単位では、ほぼなくなってしまった。
さらに合併によって自治体名もひらがなを使ったり、「中央」「桜」といった地名と全く関係ない言葉を使うところも多く、自治体名と最多名字が一致しているのは、全国で椎葉村だけである。