世界が注目した台湾総統線、まさに「米中の代理戦争」 ウクライナと同じ「民主主義」と「権威主義」の戦い

治安 太郎 治安 太郎

2024年の選挙イヤーの幕開けで、台湾で総統選挙が行われた。その結果、蔡英文政権で副総統を務める頼清徳氏が選挙戦で勝利し、今後4年間は緊張感漂う中台関係が続くことになりそうだ。今後も中国による軍事的挑発や経済的威圧、サイバー攻撃や偽情報の流布など台湾への圧力が繰り返されるだろう。

しかし、今回の選挙で筆者が強く感じたのは、その注目度である。台湾では4年ごとに総統選挙が行われるが、今回の諸外国の注目度はこれまでよりはるかに高かった。日本でも米国でもその動向は頻繁に取り上げられ、そこには「今後の世界の行方を左右する総統選挙」のイメージが強く滲み出ていた。では、なぜそのようなイメージが強くなったのか。

当然のことだが、台湾の総統選挙は台湾国内のイベントであり、諸外国が介入する問題ではない。しかし、近年の台湾は「民主主義」と「権威主義」の戦いの最前線にあるという事実を我々は忘れてはならない。

今回の総統選挙で最大の焦点となったのは、米国寄りの指導者と中国寄りの指導者のどちらが勝利するかであった。結果論、米国寄りの指導者が勝利したわけだが、米国としては台湾への防衛協力を続け、台湾を中国による太平洋進出を抑える防波堤として機能させておきたいので、米国との関係を重視する頼氏が当選したことに安堵している。

一方、中国としては独立勢力と位置づける民進党政権がさらに4年間続くことになったことに強い不満を覚えている。中国の習政権は台湾統一を強く掲げているが、では統一すればそれで終わりかいったらそうではない。中国には海洋進出を強化し、いずれは西太平洋で影響力を拡大させるという野望がある。台湾統一はその出発点にすぎず、台湾を支配下に置けば、台湾軍を中国軍に組み入れ、台湾を太平洋進出に向けての最前線基地にすることは間違いない。台湾が中国軍の出発拠点となれば、同地域の安全保障バランスは大きく変わることになる。

これが米国が台湾を強く後押しする核心だ。これまで太平洋秩序で覇権を握ってきた米国からすると、その現状打破を目指す中国の存在は大きな脅威となる。米中の軍事力の拮抗が顕著になる中、米国は今後も防波堤としての台湾への支援を継続するだろう。

要は、今回の総統選挙は米中の代理戦争という意味も含んでいるのだ。そして、これは同時に民主主義陣営と権威主義陣営のどちらが勝つのかという問題でもあり、そこはウクライナ情勢と全く同じだ。バイデン政権が批判が強まる中でもウクライナ支援を継続するのは、ウクライナ情勢で権威主義国家ロシアに民主主義陣営が負けてはならないという危機感からだ。今日、ウクライナと台湾は両陣営にとっての戦いの場となっている。

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