能登半島地震で起きた地形の変化を比較した写真が、SNS上で「地震の威力を感じる」と注目を集めている。撮影したのは、石川県を拠点にするフォトグラファー・吉岡栄一さん。2枚の写真は、輪島市の皆月湾を同じ構図で写している。1枚は2016年撮影で、なだらかな水面が印象的。一方、地震後に撮影した1枚は水位が下がり、岩場がむきだしになっている。産業技術総合研究所の調査によると、隆起は最大4メートル。吉岡さんは「隆起の瞬間の海を想像すると本当に恐ろしいです」と話す。
見慣れた海が一変「嘘だろ…」
吉岡さんの実家は石川県輪島市門前町の皆月地区。地震発生時は、正月行事の撮影に出かけていたが、無事だった。しかし実家とは連絡が付かなかった。皆月に向かう道路は地割れや土砂崩れが発生し、寸断状態。約10キロの山道を歩いて超え、2日に母親、4日に父親と姉の無事を確認できたという。
1週間ほど状況が整理できた頃、「能登半島の今」を残しておかなければいけないと思い、地元を歩いて撮影した。墓石が倒れた墓、屋根瓦が落下した一軒家…。皆月湾もその一つだった。
「隆起したという情報はニュースで知っていましたが、実際に見ると、見慣れた海の景色が一変していたので『嘘だろ…』と目を疑いました」と吉岡さん。海だった場所が、広範囲にわたって砂浜や岩場に。海に囲まれている防波堤は、岩肌に乗るような形になっていた。漁港は船の出入りができない状態だった。
規模の大きさを物語る比較写真をX(@EiichiYoshioka)に投稿すると、反響が続々。「ほんの数十秒で地形ってこんなに変わるものなのか…」と驚く声や、「漁場の状態や漁師の方の生活も心配」など今後を慮る声が集まった。
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地震から2週間以上。県は二次避難を呼びかけており、多くの人が金沢などに身を寄せているという。「精神面や衛生面は避難生活が長引くほど悪化していくと思います。みなさん力を合わせて生活していますが、先行きの見えない状況に限界を感じている方も多いです。それでも懸命に、毎日を過ごしています」。時間はかかるけど、能登なら復興できる。そう信じて、吉岡さんも町を記録し、発信し続けるつもりだという。