あなたの愛猫の写真が勝手に使われたら?「自分の飼い猫のようにSNSに無断投稿」「無断でグッズ化され販売」…法的な対処法を弁護士が解説

猫・ペットの法律相談

石井 一旭 石井 一旭

自分の飼っている猫が勝手に撮影されて、他人のSNSに“自分の飼い猫”であるかのように投稿されていました。この場合、勝手に撮影して投稿した人に対して、法的になにか言えるでしょうか。また、SNSにアップしていた愛猫の写真を無断転載された場合や、愛猫を無断撮影した写真がグッズに加工されて販売されていた場合については、どのようなことが言えるでしょうか。

ペットに関する法律問題を取り扱っているあさひ法律事務所・代表弁護士の石井一旭氏が解説します。

▽(1) 無断撮影された場合

人間が無断で撮影され、どこかに投稿された場合は、撮影された者は、「肖像権」の侵害を理由として、無断投稿した人物に対し、投稿の削除・差し止めや損害賠償を請求することができます。

肖像権とは、自分の姿形を第三者に勝手に利用されない権利で、基本的人権であるプライバシー権の一種であると理解されています。

ではネコの場合はどうかというと、残念ながら「人」ではないネコには人権がなく、したがってプライバシー権も肖像権も認められないため、肖像権侵害を理由とした削除請求や損害賠償請求はできません。

では「自分の飼いネコであるかのように投稿された」ことを理由に賠償金を請求できるでしょうか。

そのネコが著名な「芸能ネコ」で、その飼主であることに特別なステータスや金銭的価値が生じていれば別ですが、そうでない場合は、金銭的損害が発生しているとは言い難いです。もちろん無断利用による精神的な苦痛はあるでしょうが、その苦痛の程度は法的に保護されないでしょう。

残念ながら、愛猫を無断撮影・無断掲載されても、投稿者のマナー違反であり、道徳的な問題があることは間違いないですが、それを超えて、賠償や差止などといった、相手にペナルティを課す法的責任を追及することは困難です。

ただし、ネコの写真の中に飼主の個人情報が写り込んでいるような場合、例えばネコと一緒に飼主の顔まで無断撮影・投稿されてしまったような場合であれば、ネコの権利侵害ではなく、飼主のプライバシー権・肖像権侵害を理由として差止請求・損害賠償請求をすることができます。

▽(2) 無断転載された場合

飼主が撮影してSNSに投稿した愛猫の写真を「自分の猫」として無断転載された場合はどうでしょう。

この場合、愛犬の写真は飼主(撮影者)の著作物といえますので、飼主(撮影者)は著作権侵害を理由として、プラットフォーム事業者に対する削除請求や無断転載者に対する発信者情報開示請求、損害賠償請求をすることができます。このような請求をする場合は、自分の写真がオリジナルであることと、無断転載者の投稿がパクリであることを証明するため、撮影・投稿日時のタイムスタンプをきちんと記録しておくことが重要です。

▽(3) 無断商業利用の場合

それでは、愛猫を第三者が勝手に撮影してTシャツやマグカップなどにプリントして販売するなど、愛猫の姿形を飼主に無断で商業利用していた場合はどうでしょうか。

最高裁判所平成16年2月13日判決は、動物に対する所有権(飼主の権利、と考えてください。)は、その物の名称等を排他的に支配する権能にまで及ぶものではない、としました。所有物の名称等が持つ顧客吸引力を排他的・独占的に利用する権利は、商標権や著作権、不正競争防止法等といった知的財産関係の法律によって認められている限りにおいて認められるのであり、所有権からは所有物の顧客吸引力についての排他的な利用権を導くことはできない、としたのです。したがって第三者が動物の顧客吸引力を利用したとしても、その利用行為は動物の所有権を侵害するものではなく、よって賠償請求も差止請求もできないと判示しました。

よって、単に自分の愛猫の写真をグッズに利用されているだけ、ということであれば、グッズ販売の差止や損害賠償請求をすることはできません。

ただし、飼主が映り込んでいるなどのプライバシー侵害がある場合や、飼主の撮影した写真が使われているなど飼主の著作権に対する侵害が認められる場合、飼主が愛猫グッズをすでに販売していて第三者の無断使用がその営業活動の妨害となるような場合であれば、著作権法や不正競争防止法違反を理由に、損害賠償請求や差止請求をすることが可能となります。

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