豊臣秀吉の五大老・宇喜多秀家が築いた商人町がルーツ 400年以上の歴史ある商店街 新規出店が相次ぐのはなぜ

山陽新聞社 山陽新聞社

 スタイリッシュなラーメン店やおしゃれな雰囲気のコーヒーショップ、通り沿いから見えるケースに並んだおいしそうなパン…。岡山市北区表町の中之町商店街を歩くと、ここ2年ほどの間に目新しい店が増え、なんだか楽しそうな雰囲気になっている。中之町は上之町、下之町などと並び「表八カ町」と呼ばれる表町商店街を構成する8商店街の一つで、その起源は豊臣政権を支えた五大老の一人、宇喜多秀家(1572~1655年)が岡山城とその城下町を整備した際に、領内各地から商人を集め、城下の山陽道沿いに住まわせたことにさかのぼる。400年を超える歴史のある中之町で何が起きているんだろう? 開業した店主と関係者を訪ねて探ってみた。

楽しかった思い出

 2021年8月にコーヒー専門店「en.珈琲焙煎(ばいせん)所」を始めた鈴木一穂さん(33)。幼い頃、父親と近くの料理店を訪れて楽しかった思い出があり、中之町への出店を決めた。

 店頭で約30種類の豆を量り売りするほか、コーヒーやソフトクリームのテイクアウトにも対応。天満屋岡山店で買い物をする主婦層や20、30代もよく来るという。

 「ずっとここで店をやっている人たちから『若い風を吹かせてほしい』と言われて励みになった。地域になじむ店を目指していきたい」と鈴木さん。

個人店が集まる

 ラーメン店「誠悠堂」は近くの店で修業した村井誠さん(46)が21年5月にオープンさせた。白を基調に木のテーブルが並ぶ店内で、鶏だしであっさりめのラーメンなどが味わえる。

 商店街は出店交渉などハードルが高いイメージだったが、中之町商店会の理事長を務める片山進平さん(43)の地域を盛り上げたいという思いに共感して選んだ。

 出店してみると、アーケードがあって天候に左右されにくく安定した集客がある。意外だったのが8割を女性が占める客層。村井さんは「ラーメン屋は男性客が多いイメージなのに、ここまで女性に人気になってびっくり。若いグループや一人で食べに来る人、年配の方など世代も幅広い」と話す。

 両店の開業後も23年1月にパンと焼き菓子の店、3月に無印良品、8月に抹茶カフェがオープンするなど、21年以降に20店近くが出店。アーケード内1階の物件は53件中52件が埋まった。「個人店が集まっているのが商店街の良さ。若い人の出店が増えていて素直にうれしい」と村井さんは歓迎する。

 「若い人向けだと思っていた店に年配層が訪れることもよくあり、面白い現象が起きている」と近年の変化を説明する片山さん。出店希望者と物件所有者をつなぐなど店舗誘致に力を入れており「少しずつだが街を歩く人が『中之町、最近なんか勢いがあるな』と感じられるようになってきた。ここを目的に訪れたいと思われるようエリア全体の価値を高めたい」と話している。

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