野犬だった保護犬を家族に 先住犬や先住猫が新入りの不安を和らげてくれる 苦手な散歩も一緒なら大丈夫!

松田 義人 松田 義人

ピースワンコ・ジャパン(以下、ピースワンコ)は、 犬たちの保護・譲渡活動を通じて「殺処分ゼロ」の実現を目指す保護団体です。広島県の神石高原シェルターにて保護・トレーニングしたのち、全国各地の譲渡センターにて新しい家族との出会いを探します。

ピースワンコには多くの元野犬がいます。それまで人間と接していなかったことから、人間への警戒心や恐怖心が強く、スタッフが近づこうとするだけで逃げ回るワンコも多いものです。一方、人間とのコミュニケーションは苦手でも、他のワンコとは仲良くなれるワンコが多いのが特徴です。

元野犬の保護犬を里親希望者さんに譲渡する場合、「新しい環境に先住犬がいるほうが、結果的に人間にも早くなじむ」といった実例も、これまでに多く見てきたそうです。

野犬特有の性質と、先住犬がいる環境が望ましい理由

野犬は集団で群れをなし生活していたワンコが多いため、他のワンコと一緒に生活することで安心する傾向があります。たとえばその家にいる先住犬が飼い主に対し信頼を寄せているのであれば、これが信用材料となり、後からやってきた元野犬も「仲間が信頼しているのだから、大丈夫なのだろう」と心を開く場合もあります。

もちろん、犬同士の相性はありますが、こういったことから元野犬の譲渡先に「先住犬がいるほうが良い」場合は多く、2021年10月にピースワンコにやってきたニルヴァーナという元野犬も、多頭飼いの家に迎え入れられることになりました。

「犬1匹+猫4匹」がいる環境へ迎え入れられることに

保護当時のニルヴァーナは推定4歳。真っ白の毛並みとルックスがかわいらしいメスでしたが、大きな音、車の音、人の急な動きがとにかく苦手でした。

一定の人馴れトレーニングを経て、ピースワンコのあきる野譲渡センターに移動し、本格的に里親募集をかけることに。多くの申し出の中から最もニルヴァーナにピッタリと思われる里親希望者さんの家で第二の犬生を歩むことになりました。

スタッフによれば、譲渡を決めた理由は、優しい人柄はもちろんですが、「すでに犬1匹、猫4匹を飼っている」という環境でした。先住犬や先住猫がいる環境であれば、比較的早く馴れてくれるだろうと期待しての判断でした。

先住犬・先住猫の様子から「ここは悪い場所ではない」ことを学ぶ

新しい家に迎え入れられたニルヴァーナは、ビクビクした様子で部屋の隅っこでジッと固まっていました。目線の先にいるのは先住猫。その動きをずっと追いけ、「ここは悪い場所ではないのね」「むしろみんなが楽しく過ごせる場所なのね」と理解し、時間はかかりながらも隅っこから姿を現し、先住犬や先住猫たちと仲良くなったのです。後には家族が食事をしているとその匂いが気になりそばに寄ってくるように。

「大変なことはあるが、みんなが仲良くなっていく姿が嬉しい」

散歩が大好きなニルヴァーナですが、一匹での散歩はまだまだ不安そうです。自分よりも体の小さな先住犬と一緒だと安心して散歩に向かいます。ニルヴァーナにとって、先住犬・先住猫は心強い存在であり、きっと多くのことを彼らから教わり学んでいるのだと思います。

里親さんも「先住犬や猫のおかげ」と語りました。

「先住犬や先住猫のおかげで、ニルヴァーナも慣れるのが早かったです(まだまだですが……笑)。そして、猫たちにも少しずつ心を開いていく姿が見られて本当にうれしいです。先住犬猫との相性や散歩など、大変なことはあるけれど、その分みんなが少しずつ仲良くなっていく様子や楽しそうにしている姿がみられるので、多頭飼いして良かったなと思います!」

ニルヴァーナが卒業したあきる野譲渡センターでは卒業犬211頭のうち、先住犬・先住猫のいるお家に迎えられた子は47頭。なんと5組に1組は多頭飼いの家族だったということになります。

多頭飼いには一定の注意点や犬猫同士の相性などもあります。しかし、うまくいけば、それまで以上の楽しい時間を犬猫、人間ともに過ごせる可能性も秘めています。すでに犬猫を飼っている方は、その豊かな時間をさらに増やすために、保護犬を迎えることを考えても良いかもしれません。

ピースワンコ・ジャパン
https://peace-wanko.jp/

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