狼に似たルックスの野犬 警戒心が解けると超のつく甘えん坊 体をなでられ幸せそうな動画が新しい飼い主さんから届いた!

松田 義人 松田 義人

犬の「殺処分ゼロ」を目指し、犬の保護及び譲渡活動を行っている団体、ピースワンコ・ジャパン(以下、ピースワンコ)。2021年の夏、同団体によって愛護センターから引き出された元野犬のワンコがいました。焦茶の毛並みで威風堂々とした狼にも似たルックス、シュンという推定2歳ほどのオスです。

人間が苦手でスタッフに歯を剥いて威嚇するシュン

元野犬は、他の犬と協調性があることが多い一方、人間とのコミュニケーションが苦手で警戒心が強いことが多いものです。シュンも人間が苦手のようで、ピースワンコのスタッフが体に触れようとすれば歯を剥いて威嚇します。元野犬の世話に慣れているスタッフでも苦労するほどでした。

当初は散歩に連れていくためのハーネスをつけることを拒み、体に触れようとすればまたガブッ。それでもスタッフはシュンが人間を信用してくれるように少しずつ少しずつ、時間をかけて、距離を縮めていきました。

ある日のこと。ハーネスをつけることをスンナリ受け入れてくれ、そして散歩に連れていくと、率先してグイグイ歩きます。リード越しにシュンの強い力が伝わってきますが、同時に散歩が大好きなワンコこともよくわかりました。

「よくよく考えてみると、お前なんか知らない」

シェルターで一定期間を過ごし、だいぶ人間に慣れたシュンは、里親さん探しのためにピースワンコの譲渡施設、生駒譲渡センターへと移動しました。

シュンにとっては新しい場所ですが、ここでもスタッフとの散歩が大好きの様子。ハーネスをつけると嬉しそうに散歩に出かけました。シェルターで過ごしていた様子同様、やはりグイグイ引っ張りながら楽しそうに歩くシュンでしたが、あるとき突然態度が一変しました。

スタッフのほうを一瞬振り返ったシュン。よくよく考えてみると、シェルターで散歩していた頃とは違うスタッフがリードを持っていることに気づきました。

「あれ、おかしいぞ。……お前は誰だ? なんで俺のリードを持っているんだ? よくよく考えてみると、お前なんか知らない? ワンワンワン!!!!」

ハーネスをつけてもらい散歩に出かける際のシュンは、「散歩行けるの?ヤッター!」とうれしさが先走り、連れていってくれる人まではよく確認しておらず、散歩の途中でようやく気づいたようです。オッチョコチョイでもありますが、別の見方からすると、まだ人間への警戒心があり、特によく知らない人とのコミュニケーションは苦手なままのようでした。

どこか神経質で寂しがりの一面もあった

スタッフは、シュンが人間に対して嫌なイメージを持たないよう、おやつを利用するなどし、工夫しながら慎重に接するようにしました。

そんなことを繰り返していたある日のこと。スタッフが施設内の広いスペースでシュンを含む数頭の保護犬と過ごしていると、シュンがスタッフの撫でる手に身を任せてくれました。スタッフは一瞬驚きましたが、どうやらシュンがやっとスタッフは「この人は味方だ」と認識してくれたようでした。

以来、シュンはスタッフに自らコミュニケーションをとるようにもなりました。例えば、シュンがワンコ同士で遊んでいても、スタッフを見つけるとすぐにかけ寄ってきたり、寝る際もスタッフにぴったりと身を寄せてくるようになったりと、本来の「甘えん坊」な片鱗を見せるようになりました。

一方、スタッフの気を引こうと、わざと部屋の中で排泄したり、執拗に自分の手足を舐めてその部分の毛が薄くなったりもしました。シュンは愛くるしい甘えん坊なところ、オッチョコチョイなところもありますが、どこか神経質で、寂しがりやの一面も持ち合わせているようでした。

そんな様子を見てスタッフは「シュンを中心に考えてくれ、シュンだけを大切にしてくれる新しい家族が早く見つかるように」と思いました。

目には見えない縁で結ばれていた家族との出会い

そんな生活をおくっていたシュンですが、ある日、生駒譲渡センターへ見学に訪れたある家族がいました。シュンを含む何頭かのワンコと触れ合い一度は帰ったものの、「どうしてもシュンが忘れられない」と、再度会いに来てくれました。

あれだけ警戒心が強く、どこか神経質な面もあるシュンが、この家族とは「散歩」「手からおやつをもらう」「撫でてもらう」が全て成功することができました。きっと目には見えない縁で結ばれていたのでしょう。シュンはこの家族に迎え入れられることが決まりました。生駒譲渡センターに来て約1年2カ月にして、ピースワンコを卒業することになりました。

譲渡から2日後、里親さんから送られた動画には…

卒業の際、スタッフは「たくさん甘えてくれて、人間を好きになってくれてありがとう」とシュンに伝えました。なかなか手を焼いたシュンだけど、いっぱい甘えてくれたのもシュンでした。スタッフはシュンが新しい犬生をおくれることを本当に喜びました。

譲渡から2日後、里親さんがシュンの新生活の様子を映した動画をスタッフに送ってくれました。床に座る新しい里親さんのもとへ、シュンが自ら寄っていき、気持ちよさそうになでられている映像でした。

新しい場所に馴れなくても、人間を信頼し安心して過ごすことができるようになったことをスタッフは実感しました。

このシュンのように、最初は気性が荒かったり、警戒心が強いワンコであっても、人間が誠実に接し、たっぷりの愛情を注げば心を開いてくれ、人間のパートナーになってくれるワンコはまだまだいます。シュンの好例をもとに、スタッフはこれからも多くのワンコを幸せな犬生へとつないでいきたいと、気持ちを新たにしました。

 ピースワンコ・ジャパン
https://peace-wanko.jp/

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