真冬の牧場で保護された野犬 そばには2匹の子犬 保護団体スタッフの愛情が心の扉を開いた

松田 義人 松田 義人

「保護犬」と言っても、そのバックボーンは実に様々です。元飼い犬、元野犬と大別はできても、抱えていた過去の問題は1頭ごとにさまざまです。性格、年齢、持病なども当然1頭ごと違うものであり、「保護犬はこういう性格だ」と言い切ることができません。

さまざまなバックボーンを持つ行き場を失ったワンコを数多く保護し、幸せな第二の犬生へと導いてきたのが、北海道を拠点に活動を行うHOKKAIDOしっぽの会(以下、しっぽの会)。2022年の冬に元野犬として保護されたミックス犬のメスの楓(かえで)も、その犬生は波乱万丈なものでした。

冬場は極寒の北海道で、誰にも頼らず生き抜いてきた

楓が最初に保護されたのは、北海道・浜中町の牧場でのこと。保護当初、楓のそばには楓が産んだと思しき子犬2頭がいました。

この子犬はしっぽの会とは別の愛護団体に引き取られましたが、楓はそのまま地元の周囲さんと役場の人に保護されました。楓の体をよく見ると、過去に何度も妊娠・出産を繰り返してきた様子です。冬場は極寒となる北海道で育ちながらたくましく生き抜いてきたことが伝わってきました。

地元の獣医さんは、まず楓に不妊手術を実施し、最終的には釧路保健所に収容されることになりました。

初めての場所・人間の前では歯を剥き出して唸る楓

これまで野犬として過ごしてきた楓は、当然人間と接する経験もなかったはずです。しかし、保健所の職員によれば、楓をお世話しているスタッフには心を開くようになり、やがて一緒に散歩することもできるようになったとのこと。ただし、楓にとって未体験の場面に遭遇すると、途端にパニックになり、ときには唸ることもありました。

そんな楓でしたが、いつまでも保健所にいられるわけではありません。一定期間、引き取り手が現れなければ殺処分対象になってしまいます。そこで引き出すことにしたのが、しっぽの会だったというわけです。楓を引き出してすぐに病院に連れていき、診察をしてもらいましたが、そこでもやっぱり楓は「私に何をしようとするの?」と言わんばかりに歯を剥き出しにして唸っていました。きっと楓は目まぐるしく変わる環境の変化に戸惑いと恐怖を感じていたのだと思います。

団体スタッフの愛情を受け、心を開いてくれるようになった

引き出し当初はしっぽの会のスタッフにもなかなか心を開いてくれない楓でしたが、懸命なサポートとたっぷりの愛情を注ぎ続けた結果、「この人たちは攻撃してくる人じゃない」「私にとっての味方なんだ」と理解してくれたのか、次第に信頼を寄せてくれるようになりました。

当初は、体を触ることはおろか、人間が楓がいる部屋の前を通るだけでも唸っていたのに、のちにはリードの着脱で体を触っても怒らなくなりました。

ずっと野外で生活してきたからでしょうか、楓は部屋の中よりも外が大好きな様子。ドッグランに連れていけば、他のワンコと一緒に駆け回り、うれしそうな笑顔を見せてくれるようにもなりました。

現状では、里親募集などは行なっておらずまだまだ経過観察中の楓ですが、これからの未来に、少しでも楓が笑顔で過ごせる時間が増えるよう、しっぽの会では「スタッフ一丸となって楓に根気強く接し続ける」とのことです。

HOKKAIDOしっぽの会
https://shippo.or.jp/#gsc.tab=0

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