「達成まで厳しい状況が続いております」「皆さまへ大切なお願いです」。
京都市左京区の叡山電鉄が保存車両修復のためのクラウドファンディングに挑んでいる。だが締め切りまで残り5日となる中で、支援金額は目標の50%ほどしか集まっていない。期限まで残り少なくなった中で発せられた社長のメッセージには悲痛な思いが込められていた。
叡山電鉄は京都市郊外の鞍馬や貴船、八瀬といった観光地と京都市街を結ぶ私鉄。クラウドファンディングは左京区の鞍馬駅前に保存されている車両「デナ21型」修復を目的に、10月2日にサイト「レディーフォー」でスタートした。
デナ21型は1928年に叡山電鉄の前身の会社が導入した車両で、木製部分が多いのが特徴。保存されているデナ21型21号車は1994年に引退したが、鉄道ファンらの要望で運転台部分だけが「カットモデル」として鞍馬駅前に置かれることになった。
しかし、カットモデルは設置から30年近く経過し、屋根や床部分の腐食などが目立つようになった。叡山電鉄が修復資金を集めるねらいで期限を11月30日に、目標金額を800万円と設定しクラウドファンディングに取り組んだ。
同社初めてのクラウドファンディングは目標額に達しないとプロジェクトが成立せず1円も得られない「オール・オア・ナッシング」形式。支援金額は10月中旬に10%に到達したが、その後は停滞ぎみとなった。11月中旬に20%を突破、同月20日になって30%を超えたが、残る5割ほどを5日間で集めなければならず、厳しい状態が続いている。
今月16日には「必ずプロジェクトが達成できるよう、最終日まで発信を続けてまいります。どうか、ご支援にご協力をいただけるとうれしいです」とお願いの文章をクラウドファンディングのページに記述した。
20日には豊田秀明社長の名前で「あと10日。叡山電車から、皆さまへ。大切なお願い」と題した文を追記した。
近年、新型コロナウイルス感染拡大や豪雨により市原-鞍馬駅間で長期間運休せざるを得ず「2020年度のお客さまはピーク時の約4割減と大幅に減少しました」と赤裸々に経営が厳しい実情を吐露。豊田社長は「みんなで修繕をすることで、たくさんの方の思い、思い出をのせ、きれいによみがえらせることができたら、と願っています」と支援を訴えた。
返礼品は3000円から20万円までの16コースあり、車庫の撮影・見学ができたり、観光列車「ひえい」の特別貸し切り運行に参加できたりするプランもある。
叡山電鉄の担当者は「1両丸ごとではなく、運転台部分だけのカットモデルなため価値を見いだせていただけていないのではないか」と苦戦理由を推察する。残る日はわずかだが、「この数日、支援金額は伸びている。SNSなどで引き続き発信していくしかない」としている。
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【クラウドファンディングのページ】
▽叡山電車|鞍馬駅に唯一残るデナ21型車両のカットモデル修復へ
https://readyfor.jp/projects/dena21