高さ8.5メートル、使った稲わらは1トン「奈良の大仏」ならぬ「わらの大仏」が出現!

西松 宏 西松 宏

福岡県筑前町にある安の里公園に巨大な「わらの大仏」(高さ8.5メートル、幅5.5メートル)が出現し、注目を浴びている。町の有志で構成するまちおこしグループ「筑前若者会(ちくぜんわっかもんかい)」(会長・金子毅さん)のメンバーが中心となり、中学生からシニアまで町民のべ800人が力を合わせて制作した。使用した稲わらは約1トン。頭部の螺髪(らほつ)や柔和な表情、台座なども精緻に表現され、前には巨大な賽銭箱も設置。記念撮影をしたり手を合わせてお参りしたりする見学者で賑わっている。

稲作がさかんな同町では、2015年秋、町合併10周年を記念して、稲刈りのあとの稲わらを使って巨大な「わらかがし」(「かがし」は「かかし」がなまったもの)を作ることに。初回は巨大なイノシシを作った。以来、ゴジラ、龍、零戦、ゴリラ、ティラノザウルスなどを制作。今回の大仏は9作目(9年目)となる。「今秋はどんな巨大わらかがしができあがるか楽しみ」と、町民のみならず、近年は全国の人たちから注目が集まっており、同町のシンボル的存在となっている。

同会会長で一級建築士の金子さんは、今回、大仏を作った理由をこう話す。「『奈良の大仏』ならぬ『わらの大仏』です(笑)。その昔、大仏は、疫病や地震、水害などが続き社会不安にさらされていた頃、多くの人々が力を合わせて、災(わざわ)いを鎮めるために作られたと言われています。現代も感染症や災害が各地で起こっています。町民が力を合わせてこれらに立ち向かい、皆が安心して心穏やかに暮らせるように、との願いを込めました」

金子さんら会のメンバーが中心になり、9月から制作を開始。中学生からシニアクラブ、町の各種団体など、のべ800人が制作に協力、参加した。作業はまず、角材や竹で土台となる骨組みを作り、稲わらを束にして紐で繋げ(「とば編み」と呼ばれる)、それらを土台に貼り付けて肉付けしていく。

「難関だったのは頭の螺髪の部分。一番目立つ部分ですし、わらでどうやって表現したらいいか、当初は悩んでいたのですが、20代の若者たちが『バーベキューなどで使う深い紙皿(直径15センチ)の表面に、わら縄を螺旋状にして貼り付けてみては』とのアイデアを出してくれたんです。実際にやってみると、見栄えも耐水性もよかったため、それを200個作って頭部に貼り付けました。若い人たちが率先して取り組んでくれたのがとても頼もしかったです」(金子さん)

11月初めに完成し、4日の「かがし祭」前夜祭でお披露目された。使用したわらは全部で約1トン。顔や手の表情なども精緻な造形がなされている。見学者からは「大きくて立派」「わらで作ったなんてすごい」「ありがたい」などといった声が聞かれ、中には手を合わせてお参りする人も。

 「巨大わらかがしの制作は、技術継承や世代間交流の貴重な機会でもあり、『わが町の誇り』と言って頂ける方も多いです。来年は町合併20周年、わらかがし10作目となる節目の年。ぜひ来年も楽しみにしていてください」と金子さん。

展示は1月末まで。12月の5のつく日の夜は夕暮れから20時までライトアップされる。半眼の両目の中にはライトが装備されており、両目が黄色く光るそう。今年1年の感謝や来年の抱負など、わら大仏さまに祈願すれば、願いを叶えてくれるかも。

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