中国の国家外資管理局は3日、今年7月~9月期の国際収支を発表し、外国企業の中国への投資がおよそ1兆7600億円マイナスになったことが分かった。これは新たに外国企業が中国に投資した総額より、撤退や規模縮小で回収した総額が大きかったことを意味し、お金が1兆7600億円ほど中国から逃げたことを意味する。
マイナスとなるのは、統計が公表された1998年以降で初めてだという。しかし、これはトランプ政権以降、米中の間で貿易戦争が激化し、近年の中国による経済的威圧を考慮すれば当然の結果と言えよう。それが具体的な数字となってやっと明らかになったのだ。
たとえば、近年、中国は関係が冷え込んだ台湾とオーストラリアに対し、経済的威圧を仕掛けた。
蔡英文政権下の台湾と中国の関係が冷え込む中、中国は台湾産のパイナップルや柑橘類、高級魚ハタなどの輸入を突如停止した。これについて中国側は衛生上の理由だとしたが、国際社会では経済を武器化することで台湾に圧力を掛けたとの見方が一般的だ。新型コロナの真相究明や人権問題で中国とオーストラリアの関係も冷え込むなか、中国はオーストラリア産の牛肉やワインなどの輸入を突如停止するなどした。
そして、米中の間で半導体覇権競争がエスカレートする中、日本は7月下旬に米国と歩調を合わす形で、先端半導体の製造装置など23品目で中国への輸出規制を開始したが、中国はそれへの報復として、半導体の材料となる希少金属ガリウム・ゲルマニウムの輸出規制を強化した。中国側は米国と足並みを揃える日本に対しても、経済貿易上の不満をますます募らせるようになった。それが具体的な行動に移されたのが、福島第一原発の処理水放出に伴う日本産水産物の全面輸入停止だ。
経済的威圧にも様々なレベルがあるが、これは極めて影響が広範囲に及ぶ規制であり、これによって中国による経済的威圧への懸念は日本国内でもいっそう広がることになった。今日、日本の水産業者の間では、中国に深く依存する警戒感が広がり、対中依存を可能な限り下げ、東南アジアなどを重視し、リスクを分散させる動きが広がっている。
こういった形で経済的威圧を頻繁に仕掛ける国に、企業の利益や国家の繁栄を依存するわけにはいかない。当然ながら、中国との完全な経済デカップリングは非現実であるが、そのリスクを最大限避けるためにも、日本企業は中国への投資をできるだけ縮小し、その分をグローバルサウスの途上国に向けるべきである。今後も中国との安全保障や経済、貿易やテクノロジーなどを巡る対立が続くことから、安易な投資は避けるべきだろう。莫大に投資したにも関わらず、その投資金が凍結されたり、結局は中国国営企業の恩恵になる可能性もある。今後も外資による投資は落ち込んで行くことだろう。