「履歴書の住所から家を突き止めた」採用担当の気軽発言 「コンプラ違反では?」「キモい」と恐怖…専門家の見解は

宮前 晶子 宮前 晶子

「履歴書の住所から自宅を検索する」といった採用担当者の発言がX(旧Twitter)で広まり、「気持ち悪い」「コンプラ的にどうなの?」「履歴書に細かい番地まで書きたくない」と不信感を募らせる人が…。

その一方で雇用者側の意見として、「採用側としてはわかる」「どんな家に住んでいるのかストリートビューで確認する」というものも見られました。

このように、たびたび問題になる就活や転職を巡るハラスメント。過去には、コンビニ経営者がバイト面接の履歴書から携帯電話の番号を入手し、脅迫・強姦した事例も。そこで、履歴書に記載の個人情報の取り扱いについて、労働問題を取り扱う仙台弁護士会所属の弁護士・太田伸二さん(@shin2_ota)に聞きました。

不誠実な対応なら採用辞退を

――履歴書の情報は法的に見ると?

「履歴書に記載された住所は個人情報です。通常は、従業員の採用のために使うものですから、企業の採用担当者が私的な興味のために閲覧したとすれば、目的の範囲を超えた個人情報の利用にあたり、個人情報保護法の規定に反することになります。

個人情報保護法17条1項は、個人情報の利用目的を特定しなければならないとしており、18条1項では本人の同意なく利用目的の達成に必要な範囲を超えて個人情報を取り扱ってはならないとしています」

――個人情報の誤った扱いで、裁判で争われた事例は?

「そういった事例は聞いたことがありません。エントリーシートや履歴書の悪用はこれまでもあったのかもしれませんが、そういったことが行われているという情報が出てくることはほとんどなかったのではないかと思います」

――では、法に触れたことが明らかになった場合、その採用担当者は?

「こういった行為は個人情報保護法に反することでもあり、明るみになれば会社の信用を害する行為。何らかの懲戒処分の対象にされるかもしれません」

――応募者が、採用に関係のない不審な行動に気づいた場合は?

「まずは、その会社に相談してください。きちんとした企業であれば、採用担当者を処分し、当事者の方に謝罪をするでしょう。一方で、そういった相談を無視、あるいは放置するような会社であれば、会社内の労務管理に問題があると推測できます。入社を辞退した方が良いと考えて欲しいです。

就活中の大学生であれば、大学のキャリアセンターに相談しましょう。自分のためだけではなく、そういった企業への紹介を大学が取り止めるなど、後輩のためにもなります」

◇ ◇

履歴書の性別の記載欄はなくなりましたが、住所の記入や顔写真の添付は求められている現状について、「リスク管理の点で不要になった方がいいのでは?」との声も。

まずなによりも重要なことは、採用担当者や企業側の採用活動に関する個人情報取り扱いへの理解。それがなくては、「職を得たい」「この会社で働きたい」という応募者の気持ちにつけ込んだ行動に対する完全な解決は望めません。

法務省や厚生労働省では、労働問題に関わる相談を受け付けています。就職・転職活動中の企業側の不審な対応やハラスメントは、泣き寝入りやひとりで問題解決を試みるのではなく、専門家に相談を。適切な解決につながります。

■太田伸二 @shin2_ota
■法務省 みんなの人権110番 電話:0570‐003‐110
https://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken20.html
■都道府県労働局雇用環境・均等部 https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/0000174136.pdf

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