2009年に映画『ドロップ』で長編監督デビューを果たした品川ヒロシ監督。当時30代だった品川も気づけば51歳。最新作映画『OUT』では、若手俳優たちとエネルギッシュな不良映画を作り上げた。ハードなアクションシーンも満載で、過酷な現場が想像されたが、「絶対楽しくやった方がいいものができる」という信念を持って臨んだ現場だったという。
不良映画の集大成として挑んだ『OUT』
自身の学生時代を描いた小説「ドロップ」を自ら監督を務め長編映画デビューを果たした品川監督。成宮寛貴、水嶋ヒロら生きのいいキャストたちが派手なアクションと熱い人間ドラマを好演し、興収20億円を超えるスマッシュヒットを記録した。そこから15年、「ドロップ」にも登場していた品川監督の友人・井口達也の青年時代を描いた実録不良漫画「OUT」の実写化で、再度不良映画に挑んだ。
「原作者とは友達だったので、『いつか映画化してほしい』とは言われていたんです。僕も51歳なので、まあヤンキー映画というジャンルがあるならば、もうギリギリの年齢かなと(笑)。『ドロップ』を撮影したのは、32~33歳ぐらいですからね。だからアクションも予算と撮影期間が許す限り、ギリギリ限界までやろうと思ったんです」
『ドロップ』に比べてカット数もアクションの手数も圧倒的に増えた。カメラワークにも違いが見られる。
「映像とか映画を撮らせてもらうようになって15年。WOWOWのドラマで『ドロップ』をやってからの『OUT』だったので、とにかくアクションの手数や会話のテンポを含めて、自分のなかでの集大成という位置づけでやりました。スマホで観る人もいるんだろうなというところも意識しました」
『品川さんの現場って楽しいな』と思ってもらえるように
『ドロップ』のときは30代前半。共演者との年齢差もそれほどなかった。しかし今回はメインキャストたちの年齢は20代前半。品川監督との年齢の差は明白だ。
「自分では51歳という感覚はあまりなんですよね。あまり年の差を感じていないというか、どちらかというと昔よりフレンドリーになっているんじゃないですかね。前の方がもっと“映画監督”って感じで現場にいた気がする。いまはみんな気さくに話しかけてくるんです。ある意味なめられているのかなって(笑)」
品川自身、若いころは現場でピリピリした雰囲気を出していたこともあった。そういった緊張感は、時と場合によってはプラスになるかもしれないが、基本的には必要ないと意識が変わったという。
「今回の作品もそうですが、タイトなスケジュールのなか、かなりしんどいこともやってもらう必要がある。心が締め付けられるようなシリアスな作品だったら、そういうピリピリした緊張感って必要なのかもしれませんが、若いエネルギーがぶつかり合うような作品なので、変にピリピリした雰囲気で芝居が良くなるとは思わないんですよ。絶対に楽しい方が役者もスタッフもポテンシャルが発揮できる。『品川さんの現場って楽しいな』と思ってもらえるように心がけています」
いまの若い子たちはみんな礼儀正しくて元気で明るい!
以前の不良映画の現場と言えば、バリバリに気合いが入った出演者が個性をぶつけあっていた。シリーズ化もされた映画『ビー・バップ・ハイスクール』は品川のお気に入りでもあるというが、約40年前とは時代が変わってきている。
「僕も『ビー・バップ・ハイスクール』は大好きでした。あの時代は本物も映画に出ていましたよね(笑)。マジものの迫力というのはあるかもしれませんが、アクションを魅せるという意味では、例えばJO1の大平祥生くんや金城碧海くん、與那城奨くんなどはしっかり訓練されていて、もともとダンスの素養もあるので、練習をすることですごく質の高い殺陣にすることができる。時代的にただ殴って蹴って……というよりは魅せるアクションが作品に良い彩りを与えてくれます」
俳優たちの真面目さにも驚かされるという。
「『OUT』ってもう、アウトな映画なのに、みんなとてもいい子なんですよ。真面目だし、文句も言わないし、礼儀正しい。元気で明るい。いまの若い子はみんなそう。すごいですよね(笑)」
自分たちの若いころとは違うと笑った品川監督。スタイリッシュな不良映画が完成した。
映画『OUT』は11月17日より全国ロードショー