動物虐待の疑いがあるとして一昨年9月と昨年11月、神奈川県警が一般社団法人「レスキュードアニマルネットワーク」(横浜市神奈川区)のシェルター(藤沢市)から押収した犬や猫計約110匹のうち約80匹の行方が分からなくなっていると、一部のメディアで報道された問題で、県警から保護を託された民間ボランティア側は、まいどなニュースの取材に対し「行方不明という事実はございません」と否定した。犬猫約80匹について「預かりボランティアさんのご協力のおかげで、動物たちは押収から約3年もの月日を暴力とは無縁に、たくさんの愛情をうけ、その子らしく幸せに暮らしております」としている。
民間ボランティア側によると、2020年以前から同法人の代表理事が保護動物を虐待しているなど、元スタッフからも「犬を叩いている」との情報が寄せられ、2021年1月に初めて刑事告発(受理)を行った。同年9月、藤沢北署が動物愛護法違反容疑で施設を捜査し、収容されていた100匹を超える犬猫を押収。その際の家宅捜査に先立ち、県警が神奈川県動物愛護センターに対して押収する犬猫の保護を委託しようと要請したが、難色を示されたため、動物愛護団体らに託されたという。
一部のメディアで、保護を託された動物愛護団体が分裂したため、約80匹については県警側が「誰がどこにどのようにしているか把握できない」状態と報道。それに対し「私たち告発人は、虐待を受け続けている動物たちを解放してあげたいという志を共にしていた集合体ではありましたが、動物の保管について意見はそれぞれあり、また時間の経過とともに、告発人を下りていかれた方がいることは事実です」と分裂した事実を認めたが、行方不明と報じられた約80匹について「今は信頼のおけるボランティアさんに預かっていただいております」という。
また押収物は刑事訴訟法(123条)で留置の必要がなくなれば事件が決着する以前でも所有者に還付する義務が定められており、代表理事側は押収された犬猫について返還を求めている。
この問題は、今年3月下旬、横浜地検が動物愛護法違反の罪で、同法人と同法人代表理事をを起訴した事件。同法人は、5年ほど前から動物の保護活動やかむ犬の矯正訓練に取り組んでいるという。さらに4月に入り、民間ボランティア側が、同法人などに対して「代表理事だけではなくスタッフも含め組織全体で体罰、虐待している」として、神奈川県警に再度の刑事告発に踏み切った。両者の主張は食い違い、同法人が説く動物への「矯正訓練」が虐待行為にあたるのかどうか、司法の判断がどう下されるのか注目されている。
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民間ボランティア側の声明文は以下の通り。
「今回このような記事が出たことにより、たくさんの方の誤解を招いたことを残念に思っております。一般社団法人レスキュードアニマルネットワークの動物虐待行為については、4年以上前からたくさんの目撃証言などが寄せられ、私たちは区役所や保健所(当時は第2種動物取扱業の届出せずに活動していたため)、警察へ通報を繰り返しておりました。通報しても、言葉を持たない動物に向けた虐待行為のため、動画に収めることを強く提案されました。暴力行為を複数回撮影することができたため、神奈川県警も違法行為の疑いを認め、刑事告発の受理に至りました。
一回目の家宅捜査に先立って、神奈川県警は、神奈川県動物愛護センターには押収する被虐待動物の保護を委託しようと要請したようですが、難色を示されたようです。動物を保管する施設をもたない警察は仕方なく押収動物107頭を私たち民間に託されました。私たち告発人は、虐待を受け続けている動物たちを解放してあげたいという志を共にしていた集合体ではありましたが、動物の保管について意見はそれぞれあり、また時間の経過と共に、告発人を下りていかれた方がいることは事実です。しかしながら、保護された動物たちの精神面、健康面は常に優先し、今は信頼のおけるボランティアさんに預かっていただいております。預かりボランティアさんのご協力のおかげで、動物たちは押収から約3年もの月日を暴力とは無縁に、たくさんの愛情をうけ、その子らしく幸せに暮らしております。つまり、行方不明という事実はございません。
当該団体・代表は、動物虐待容疑で4つの事件全てにおいて、起訴処分となっています。また、スタッフ個人に関しても動物虐待容疑で刑事告発が受理され、書類送検済みです。日本の法律上、動物はもの扱いですので、 強制執行してでも虐待者に返還されてしまいます。虐待をされ続けた子たちが自由に過ごしている時間を守ってあげたい、 虐待者に戻したくないという思いがあり、虐待をする飼い主に、所有権を放棄していただきたいということを訴え続けています。しかるべき時がきた際には解決に向け話し合うということも伝えており、それでも一部の情報のみ記事が先行し混乱を招いてしまいましたが、私たち告発人2名としては、引き続き動物たちの続く幸せを守り、所有権問題に向け活動していく次第です」
また動物の所有権の問題については、動物愛護議連や財団法人などの団体がこれまでにも被虐待動物の一時保管や所有権の剥奪などについて2025年の民法改正に向けて意見書やアンケート調査、オンライン署名を立ち上げている。