ミュージシャンになる夢をあきらめきれず、妻に相談なく会社を辞めてしまった夫との離婚に悩む女性からの相談がありました。これまで3万8千件の相談に答えてきた離婚カウンセラー・夫婦問題研究家の岡野あつこさんが回答します。
「どうしてもミュージシャンに」…家族よりも“自分の夢”優先なの?
【相談】同じ年の夫とは30歳で結婚して7年目、今春に小学校に上がる息子がひとりいます。
夫との出会いは、大好きなミュージシャンのライブでした。知人のつてでライブの打ち上げの飲み会に参加したとき、隣の席に座ったのが夫。「メンバーのひとりが学生時代のバンド仲間なんですよ。結局、自分は就職しちゃったんですけどね」と、勤務先である有名企業の名をあげて、上司や会社のグチを語っていました。
音楽のことに詳しく、ミュージシャンの裏話など夫の話は聞いていてとても楽しく、その日に連絡先を交換し、次に二人で会ったときに交際を申し込まれました。
付き合って半年ほどたった頃、私の妊娠がわかり、私たちは結婚しました。結婚後も相変わらず上司や会社のグチを言うことは続いたものの、仕事自体には真剣に取り組んでいるようで、子どもが生まれてからは昇進もはたし、とても順調に暮らしていました。
ところが、コロナ禍で突然、夫が会社を辞めてしまったのです。「やっぱり、どうしてもミュージシャンになる夢をあきらめきれない。こんな世の中になって、やりたいことに挑戦しないで一生を終わるなんてもったいないと気づいたんだ」という熱く語る夫に、私は驚くばかりで何も言えませんでした。
時間がたつにつれ、私の驚きは次第に怒りに変わっていきました。子どももいるのに、私に何ひとつ相談せずに会社を辞めるとは身勝手すぎるのではないか、という思いもあります。そもそも、ミュージシャンとして食べていかれるかどうかもわからないのに、収入はどうするのだろうか、とも。
その後、そんな大事な決断をするのに、私の意見を聞こうとしなかった夫に心底ガッカリし、夫への尊敬の気持ちや愛情も一気に冷めてしまい、今にいたります。夫にとっては、家族よりも自分の夢を追いかけるほうが大事なのでしょうか。…そう思ったら、離婚したほうがいいのではないかと悩んでしまいます。
修復の可能性は90%…きっと「夫の夢」も「家庭」もあきらめなくて大丈夫
【岡野さんの回答】コロナ禍を経験して、自分の生き方を見直す人は少なくありません。とはいえ、家族に相談もなく夫が会社を辞めたとなると、「あきれた夫」のそしりはまぬがれないでしょう。
「世の中そんなに甘くないのに」「プロのミュージシャンになんてそう簡単になれるとは思えない」「どうやって生活していくつもり?」といった、不安や怒りを感じて当然でしょう。
ただ、少し視点を変えて、夫のことを見直すことはできるはず。私は、夫婦関係を修復できる可能性は90%近くあると思います。
というのも、それほど好きでもない仕事を、家族を養うために7年間がんばって続けてきたのなら相当、我慢強い人であることはたしかでしょう。
夫が妻に相談せずに決めたのは、「以心伝心」という言葉があるように、夫婦は同じことを思い、理解してくてるものだと思い込んでいたからにほかなりません。つまり、相談したとしても、妻に反対されるとは思ってもみなかったのでしょう。
多くの人は、たとえ学生時代からの夢を抱いていたとしても、目の前の生活を成り立たせることを優先して夢をあきらめるケースがほとんど。あるいは「どうせ話しても否定されたりバカにされたりするだけだから」と自分の夢を妻に話そうとしない夫のほうが大多数ではないでしょうか。
にもかかわらず、妻に自分の夢を熱く語るという夫は、きっと「ピュアな心を持っている人」なのだと思います。そんな夫との間に子どもまでいるのに、離婚をするのはもったいないと思いませんか?
もちろん、手放しで夫の夢をかなえることを応援することはできないとしても、夢をあきらめることなく、しかも離婚せずにやっていく方法を一緒に探すという選択肢は必ずあるはず。
妻のサポートを得られることは夫の夢をかなえるための第一歩。ぜひ夫婦で可能性を考えてみてください。
◆岡野あつこ(おかの・あつこ) 離婚カウンセラー・夫婦問題研究家
「離婚しないに越したことはない! 」をモットーに、3万8000件以上の結婚、離婚、再婚相談を受け、数多くの夫婦問題を解決に導く。カウンセラー育成にも力を注ぎ、「マリッジカウンセラー、夫婦問題カウンセラー養成講座」を開講。課題解決型マッチングメディア「リコ活」アドバイザー。
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