罵詈雑言の一方で「心から愛してる」なんて…「もう正気の沙汰じゃない」 精神的ダメージが大きすぎた離婚裁判

長岡 杏果 長岡 杏果

離婚にはおおまかに、協議離婚・調停離婚・裁判離婚の3種類があります。日本では離婚する夫婦の90%が「協議離婚」による離婚をしていますが、3%程度(100人中3人)は「裁判離婚」を経験しています。しかし、裁判による離婚は想像以上に精神的なダメージが大きいそうです。DVモラハラによる裁判離婚を経験されたNさん(関西在住・30代)に話を伺いました。

―裁判に至った経緯を教えてください。

離婚の原因は元夫によるDV、モラハラ、生後間もない子どもへの虐待でした。

元夫は妊娠中は私への暴言、経済的DV、威嚇を繰り返した一方で、産後は子どもへの嫉妬心から、子どもを床に投げつけようとしたりしました。時には子どもの体に「不審なあざ」ができていたこともありました。

私は身の危険を感じて、子どもと一緒に元夫から逃げました。その後、お互いに弁護士を立てて調停で話し合いをしました。調停ではお互いに顔を合わせることはありませんでしたが、元夫は「離婚に応じない」「すべて悪いのは嫁だ」「俺は一切悪くない」「反省すれば許してやる」といった主張を繰り返し、一向に話が進展しませんでした。3回で調停不成立になり離婚裁判に至りました。

―離婚裁判でなにが一番つらかったですか?

相手から毎回届く書面を読むことが精神的に一番きつかったです。

書面を読まなければ、弁護士さんが「反論文」を作成できないので、つらいけれど読むしかありませんでした。書面を持つ手は震え、心臓はバクバク、読み進めることがとても怖かったですね。

書面には嘘八百が書かれ、私や私の両親の悪口が書きつづられ、人格をおとしめられる内容ばかり。「よくもここまで私や両親のことを悪く書けたものだ」とショックがとても大きかったです。

きっとこれ以上つらいことはないと思うほどつらかったですね。

「嫁を心から愛してる」

元夫側の主張は調停時とほぼ変わることなく「親権は渡さない」「離婚には一切応じない」といったもの。しかも、さんざん悪口を書いておきながら「嫁を心から愛している」「子どもに会いたい」といった矛盾極まりない主張を続けていました。

これだけ私や私の両親をおとしめ、信じられないようなひどい悪口を書いてきたにもかかわらず、「私を愛している」など誰が聞いても正気の沙汰ではありませんでした。

また、子どもを虐待していたにもかかわらず「親権を渡さない」など、私への嫌がらせでしかありません。子どもを私から奪いとれば、私が戻って来ると思ったのでしょう。裁判中に「いつでも嫁と子どもが帰って来れるように、ファミリータイプの寮を借りた」との主張があり、身の毛がよだつ思いをしました。

勝訴したのに…

裁判官は夫の主張を退け、こちらの離婚請求を全面的に認め、親権を「母親」とする判決を言い渡しました。しかし、その判決で引き下がる夫ではありません。

嫌がらせは続き、即控訴されました。最初から最高裁まで闘ってやると言っていたので、案の定と言った感じではありましたが、長期にわたる裁判に、私はかなり疲弊していました。元夫の書面を読むたびに精神的に参り、夫への恨みが募るばかりでした。

毎晩眠れない日々が続き、元夫に似た人を見かけると体が硬直して動けなくなり、病院に行くと医師からはPTSDと診断されました。私の精神状態は限界を超えていました。

「一日も早く裁判を終わらせたい」「お金もいらない」「縁を切って早く元夫との関わりを絶ちたい」…それだけでした。控訴審では、相手方より急に和解を持ちかけられ「離婚に応じる」「親権もいらない」「面会もいらない、養育費も支払わない」「離婚後は一切会わない」といった内容で長期にわたる裁判は結審しました。

これから離婚をされる方へ

あらためて、3種類の離婚について整理すると、以下のようになります。

1)協議離婚…夫婦間による話し合い、夫婦合意により離婚が成立
2)調停離婚…夫婦間での話し合いが難しい場合、調停員を挟んでの離婚の話し合いや、親権・財産分与などの話し合いをする
3)裁判離婚…調停不成立となった後、夫婦のどちらか一方が訴訟を起こすと、裁判で離婚や金銭面の請求ができる

離婚のための「裁判」は思っている以上に過酷な闘いになります。精神的に参ってしまうことも多々あります。

なお、裁判は証拠主義と言われるように、離婚裁判も証拠が命です。DVモラハラであれば、診断書、けがの写真(部位と顔が写るように)録音・動画・日記・ブログ、親や友人への相談メール、公的機関への相談記録(配偶者暴力支援センターや警察署への相談)など「用意できるもの」はすべて揃えましょう。

また離婚裁判にはDVモラハラに強い離婚弁護士に依頼することをおすすめします。

   ◇   ◇

【DVの相談先】

DVを一人で悩まないでくださいね。DV被害者はなにも悪くありません。

自分が悪いから、暴力や暴言を吐かれると思ってしまうこともありますが、悪いのはDV加害者です。もしも誰にも相談できずに苦しんでいるのであれば、下記相談窓口まで一度相談してみてはいかがでしょうか。

▽DV相談プラス|内閣府 DVのお悩みひとりで抱えていませんか?
https://soudanplus.jp/

▽配偶者暴力相談支援センター | 内閣府男女共同参画局
https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/e-vaw/soudankikan/01.html

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