猫は可愛いだけの生き物じゃない
しかし、実際に目の前にした猫は、動画で見るような可愛いだけの生き物ではありませんでした。人間の言葉は通じないし、鋭い爪も牙もあります。スタッフ立ち合いのもと、恐る恐る猫を抱っこします。
そんなHちゃんの姿を、迎えにきたお母さんは目にします。とても心配になったのだそう。もう行かないと言うかな、猫が嫌いになっちゃわないかなと。そんなお母さんの心配をよそにHちゃんは満面の笑みで言いました。
「ずっと行きたい!」
こうして定期的ににゃん子屋に通うようになったHちゃんは、ネオくんという仲良しの猫もでき、人間のお友達も増えました。にゃん子屋では猫のお世話のやり方を教えてもらうので、それを応用して家でのお手伝いにも生かします。お母さんがいうには、掃除機のかけ方がプロ級なんですって。
にゃん子屋ではお泊り保育も実施しており、Hちゃんは誰か一緒に寝てくれるんじゃないかと期待していました。いつもあんなに仲良しなんだから、きっと来てくれると。その期待はむなしく、1匹もHちゃんの布団に入ってくる猫はいませんでした。Hちゃんは悟りました。
「これが猫か」
ネオくんとの別れ
だからといって猫が嫌いになるわけではありません。せっせとにゃん子屋に通い、猫への理解を深めます。ネオくんとの絆も深まっていきました。ネオくんは最初に会ったころのような、鋭い目つきをすることがなくなります。
Hちゃんが小学3年生の初夏、スタッフが申し訳なさそうに言いました。それは、ネオくんの家族が見つかったということ。加えて言ってくれたんです。この家族はネオくんを必ず幸せにしてくれるとも。この時、Hちゃんは「そうなんだ」としか言えませんでした。
次の週、にゃん子屋へ行くと、ネオくんの姿が見当たりません。内装は同じなのに、ネオくんだけがいないのです。本当に新しい家へ行ってしまったのだと、改めて別れの実感がわいてきました。がくんとうなだれると、Hちゃんの周りに猫たちが集まってきます。
「きょうは、なにしてあそぶ?」
チェリッシュにはまだ沢山新しい家を探している猫がいて、人間に慣れていない猫もいます。Hちゃんは気を取り直し、猫たちに新しい家族が見つかるようお世話を始めました。ネオくんのように親切な人と出会えるよう、人間に慣れてほしい。
離れていても友達
小学4年生になったHちゃんの現在の将来の夢は、「猫に携わる仕事に就きたい」というもの。そのためには、猫だけでなく他の動物も知ろうと、学校の図書室で図鑑を読むようにしているんですって。
一方、ネオくんは新しいお家で幸せに暮らしています。Hちゃんのおかげで人間が怖くなくなり、いたずらもちょっとしかしないんです。すっかりチェリッシュで過ごした日々や、Hちゃんのことは忘れてしまっているかのよう。
でもねネオくん、Hちゃんはネオくんのことをずっと忘れないよ。ネオくんがいてくれたから、今もずっと猫について学び続けているよ。
離れていても、ずっと心がつながる関係でありますように。
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