博物館に貼られた「恐怖の注意書き」→撮影OKなのに、怖くてカメラが向けられない…?「博物館のセンスw」「オモろい」

東寺 月子 東寺 月子

「写り込んでしまった不可解な“何か”についての責任は、当館では一切負いません。」

思わず背筋がゾワッとするほど恐ろしい注意書きは、「遠野市立博物館」(岩手県遠野市)で開催中の特別展『遠野物語と呪術』に掲示された「写真撮影可」の貼り紙。お札のようなデザインも相まって、「面コーナーにカメラを向けると顔認証がブワッと大量に現れてビビった(冷静に考えればそうなるんだけど)www」など、SNSで話題となっています。

遠野といえば、民俗学者・柳田國男も「座敷わらし」や「かっぱ」など、数々の伝説を『遠野物語』に書き記しているほど、不思議な伝説が数多く残る土地。『遠野物語と呪術』展は、オカルト好きはもちろんのこと、民俗学に造詣の深い人たちの間で話題となり、図録やグッズは、何度も完売と再販を繰り返すほどの人気ぶり!

「常設も特別展もめっちゃ良かった…図録売り切れてて悲しかったな」、「行きたいのに遠野が遠くていけない野」と、行った人、興味がある人のコメントもSNSに投稿され、博物館の方も「過去イチの人気ぶりかも?!」とおっしゃる『遠野物語と呪術』展(筆者もせめて図録を手に入れたく注文したが間に合わず入手できなかった……)。博物館の公式X(旧ツイッター)に投稿される数々の呪術道具や、不思議な札などを見るにつけ、興味がそそられて仕方ありません!

遠野市立博物館の学芸員、長谷川浩さんに、この貼り紙と、特別展『遠野物語と呪術』について、お伺いしました。

伝説が数多く残る遠野ならではの企画展は、オカルト好きを虜に

ーー特別展『遠野物語と呪術』、とても好評のようですね!呪術に関する特別展はよく開催されるのですか?

「当館は『遠野物語』を中心に遠野の歴史と民俗を紹介する資料を展示した博物館です。呪術展は令和3年度に初めて開催し、今回で2回目です。ちなみに、年に3〜4回、企画展や特別展を開催しています」

ーー話題となった「写真撮影可」の貼り紙、お札のようなデザインも面白いですし、内容もウィットに富んでいて、良いアイデアですね。でも、さすがに何か写ったことは……ないですよね?

「博物館では『写真撮影可』や『写真撮影禁止』といった張り紙が、一般的に良く貼られていますよね。今回の特別展は借用資料も含めてすべて撮影の許可をいただけたので、そのことを明示するために『写真撮影可』を表示しました。当館ではこうような貼り紙を含め、展示室にあるパネルのデザインは、特別展のテーマに合わせて毎回作成しています。今回は呪術展なので、お札のイメージで作成してみました。今のところ不思議なことが起こったとの話は届いていませんね」

ーー今回の特別展、特に図録が大人気のようで!

「はい!おかげさまで図録は増刷分も含めて、合計2000部が完売となりました。実は会期中に図録が完売となったのは、今回初めてで。予想以上の売れ行きでしたね。嬉しい半面、購入を希望してくださったすべての方にお渡しできず、申し訳なく思っております。当館では、夏の特別展の際にのみ図録を発刊しています。

通常、企画展や特別展のテーマは一度開催すると同じテーマで開催することはないのですが、令和3年度の秋に企画展『遠野物語と呪術』を開催したところ人気で図録に対する多くの購入希望があったので、次は図録をつくる夏の特別展で開催しようとなり、今回の開催となりました」

ーー現在(2023年9月4日)、図録は再び売り切れとなっていますが、ぜひ再再販して欲しいです! この特別展が終わり常設展になると、呪術に関する展示は見られなくなりますか?

「9月24日で呪術展は終了し、その後の常設展では『遠野物語』と遠野の民俗を中心とした展示となります。オシラサマ、山伏資料、山の信仰資料や『遠野物語』に関する資料も多数展示する予定です。今回展示した資料の中には、オシラサマや山伏資料など常設公開している資料もあります」

ーー今後、またこうした呪術に関する展覧会は予定されていますか?

「呪術展としては今後は予定しておりませんが、『遠野物語』と遠野の民俗をテーマとした特別展を毎年開催しておりますので、その中には民間信仰に関する資料など呪術と関連する資料も公開することになると思います。ちなみに、11月1日~11月23日までは『異界と境の神(仮)』に関する展示を予定しております」

ーーおお!「異界」とは、これまた心惹かれます。では、開催中の特別展『遠野物語と呪術』の中から、面白いものを少しご紹介いただけますでしょうか?

「面白いとなると難しいのですが……遠野らしい特色のあるものを紹介します。東北6県にのみ伝わる『オシラサマ』は、桑の木などで2体一組のご神体をつくり、主に家の神として信仰されているものです(今回の特別展のほかに常設展でも、東北各地のオシラサマ、21組59点を展示しております。これは全国有数のコレクションでもありますし、一度にさまざまなオシラサマが見られるのも貴重な機会かと)。家の守り神としての『大工人形』や、今は行われなくなった風習の『春風まつり人形』も、遠野らしい特徴的なものだと思います」

会期はあとわずかですが、ひと足早く訪れる遠野の美しい秋と共に、話題の『遠野物語と呪術』展を堪能してみたいですね。この記事を読んでいる最中に、何か不可解な事が起こっても、当サイトは一切責任を負いませんので悪しからず。

【遠野市立博物館】
昭和55年(1980)に開館した日本で初めての民俗専門の博物館。
岩手県遠野市東舘町3-9
https://twitter.com/tonomuseum

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