岡山市を拠点に活動するデザインユニット「コチャエ」が結成20周年を迎えた。“遊びのデザイン”をテーマにした折り紙やおもちゃ製作、雑貨開発など取り組みは多岐にわたる。活動を通してメンバーは、日本人と紙との親和性を強く感じてきた。「だからこそ、これからも紙に命が宿っているような作品を提案していきたい」と、創作意欲を新たにしている。
2003年に、ともに岡山市出身の軸原ヨウスケさん(45)と武田美貴さん(43)が結成。折り紙に現代アートなどの図柄をプリントしたデビュー作「グラフィック折り紙」で注目された。折り紙パズルではグッドデザイン賞を受け、三鷹の森ジブリ美術館(東京都三鷹市)とのコラボ作品を手がけるなど活動の幅を広げた。
コチャエが提案するまでは、絵柄付きの折り紙は少なかった。折り紙で遊ぶのも高難度の作品に挑む上級者か子どもが中心だった。武田さんは「これまでの活動を通して、子どもと上級者の間にいる多くの人たちに、折り紙遊びの魅力に気付いてもらうことができた。それが人気を得られた理由かも」と振り返る。
12年に伝統的な紙相撲を現代的にアレンジした「トントン紙ずもう」を作ったのをきっかけに、展開すると鳥や人形になるCDジャケット、桃の箱を開けると桃太郎が出てくるきび団子のパッケージなど、折り紙以外の仕事も舞い込むように。
「古いものやデザインには強いパワーがある」と軸原さん。作品は郷土玩具や古典的な図案に影響を受けているが「ただのレトロ趣味ではなく、それをバネにして新たなものを生み出そうと活動の幅を広げている」と主張する。
ユニットに新風を吹き込もうと20年、岡山県立大デザイン学部出身の菅野沙耶さん(25)を迎えた。活動を始めてから県内メーカーの新商品を彩るイラストや文字を考案し、デジタルに頼らず自分の手でデザインすることにこだわりを持つ。「人の手で作るものにはノイズや揺らぎがあり、デジタルで表現できない味が出る。手作業を増やし、コチャエならではの土っぽさ、匂いが感じられるような作品を作りたい」と意気込む。
「続けるほどに折り紙の奥深さを感じる」と3人は話す。「折りを応用したパッケージの仕組みを考えるのが楽しい。次々に湧く発想を、どう形にしていくか」と武田さん。軸原さんは「芸術と知育を結びつけ、子どもの心を刺激する“遊びのデザイン”を探求し突き詰めたい」と展望を語る。次の10年へ向け、アイデアの泉はとどまるところを知らないようだ。
勝央美術文学館で記念展
勝央美術文学館(岡山県勝央町勝間田)で20周年記念展「紙ニケーション」を開催中。9月18日まで。