「ホテルのケトルでキムチ鍋」「修学旅行で墓地で騒ぐ」 トラブル事例で学ぶ旅行者の心構えとは

京都新聞社 京都新聞社

 「ホテルのケトルでキムチ鍋を作る」「芸妓と舞妓を勘違いして抗議」-。オーバーツーリズムに伴う観光地でのトラブルを未然に防ごうと、京都市下京区の女性が旅行者の心構えを記した本「『ツーリストシップ』で、旅先から好かれる人になってみませんか」を出版した。京都などの宿泊施設や飲食店におけるマナー違反の事例や、旅先で好かれる行動などを柔らかい筆致で紹介している。

 一般社団法人「ツーリストシップ」代表理事の田中千恵子さん(25)。千葉県出身の田中さんは京都大に進学した2017年に京都市内に移り住んだ。当時は新型コロナウイルス流行前でインバウンド(訪日客)が多く、市バスの混雑やごみのポイ捨てなどが深刻化。危機感を覚えた田中さんは京都や滋賀、大阪、山梨など各地の観光地を訪れ、オーバーツーリズムの実態を取材した。

 大学在学中に同法人を立ち上げ、観光客が旅先の自然や文化、市民に寄り添う心構えや行動を指す「ツーリストシップ」という言葉を生み出した。観光地でのクイズ形式でのPRや修学旅行生への事前学習、企業・自治体向けの講演などを通じてツーリストシップの浸透に力を入れている。

 著書では観光客の変わった行動として、ホテルのケトルでお湯を沸かし、キムチ鍋やカニ鍋、しゃぶしゃぶを調理して食べたというケースを紹介。ケトルがカビだらけになり、毎回廃棄しているというホテル側の苦悩も記した。

 このほか、芸妓体験を申し込んだ外国人観光客がかつらをあてがわれ、舞妓と勘違いして自分の髪を編むよう抗議した▽レンタサイクル店で借りた自転車を川に捨てる▽修学旅行で戦没者の墓地を訪れ騒ぐ―などの事例も盛り込んだ。

 田中さん自身が見聞きした観光客の「良い行動」の実践録では、ホテルのスタッフに感謝の置き手紙を書く▽地元の人を飲みに誘う▽観光客同士で写真を撮り合う▽早朝にランニングをして地元の人と交流する―などを紹介している。

 新型コロナウイルス禍を経て国内の観光需要が回復しつつある中、田中さんは「自分たちだけが良いという考えではなく、地元住民との交流や文化活動でもっと旅を楽しむことができる。著書が観光客と住民が互いに寄り添い合うきっかけになれば」と話している。

 税込み1430円。全国の書店やインターネットサイトなどで販売している。

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