東京・南青山 86歳カリスマ店員の自然体コーデが話題 プチプラも着古した服も織り交ぜ「大好きな服は何十年も着たい」

松田 義人 松田 義人

東京・南青山にあるカルチャー最先端スポット「スパイラル」。この5階に「call」というアパレル店があります。国内外で注目される「ミナ ペルホネン」というブランドが運営する店ですが、ここに86歳のカリスマ女性店員がいます。

昭和12年生まれの小畑滋子さん。洋裁学校を出て、洋裁の先生もしていたそうです。ただし、洋裁には造詣が深いものの、それまで「販売」は専門外で、スタイリングなどのプロではなかったそうです。

小畑さんが「call」に入ったのは79歳のとき。「call」の求人募集要項を目にし「100歳でも大歓迎」とあったのを見て、「私はまだ100歳じゃないからイケる」と応募。その明るいパーソナリティと、おしゃれへのこだわりから一躍カリスマ店員となり、現在では全国各地から小畑さんのファンが「call」に訪れるほどの人気を得ています。

おしゃれを通して気持ちをも豊かにしてくれる一冊

そんな小畑さんが今年出したのが『クローゼットには似合うもの、いいもの、大好きな服だけ』(大和書房)という本です。

2022年刊行され話題になった『85歳、「好きなこと」を続けるごきげん暮らし』(大和書房)の第2弾的な内容で、スタイリングのお手本となる数多くのビジュアルと、小畑さん流のおしゃれの美学を紹介しています。「もう自分は歳だから」「私にはセンスがないからおしゃれは無理」といった人の背中を軽く押してくれ、おしゃれを通して生活や自分の気持ちを豊かにしてくれる内容です。

ここではその一部を転載してご紹介します。

「やっぱり着てみないと、わからない」

■チャームポイントはしっかり見せます
人は一人ひとり違います。背の高さや骨格。肉づき。髪や肌の色。醸し出す雰囲気。
自分のチャームポイントを見つけて生かすおしゃれを考えることで、服も生きてくるのだと思います。
<中略>
たとえば、シャツの胸もとはボタンを留めずに全部開ける、カットソーやニットの襟ぐりは、開き過ぎず詰まり過ぎていない絶妙なラインのものを選ぶ、胸もとに目がいくアクセサリーをつける、など。
首もとは年齢が出やすいので、あまりむき出しになり過ぎないように、大きめのアクセサリーなどをつけるようにしています。
メガネもチャームポイントになります。私は丸顔なので、メガネフレームを丸型にしているのですが、あまり主張し過ぎない、さりげないデザインのものを選んで、馴染ませています。

■やっぱり着てみないと、わからない
服は着てみなければ、自分に似合っているのかわかりません。着たときの全体の雰囲気も、見ただけのときとはだいぶ変わることがあります。
<中略>
既製品であっても、できるだけ体に合ったものを選びたい。それには必ず試着が必要だと思うのです。
大切なのは、服を着てみたら試着室から一歩出て、遠目で全身のバランスを確認すること。
店員さんに客観的なアドバイスをもらうのもいいかもしれませんね。信頼できる店員さんを見つけると、そのお店に通うのが楽しくなります。(本書より)

プチプラ、着古した定番服を活かす技

小畑さんのおしゃれメソッドを読むと、中年以降の人でもなんだか楽しい気持ちになってきますが、一方で「でも、その洋服自体が高くて手が出ないんだよなぁ」とも思います。しかし、小畑さん自身は「ファストファッションのプチプラからも選ぶことがある」と言います。

■定番+ちょっとおもしろい服
私が着ている服は、オーソドックスなものがほとんど。流行は意識するけれど、そのままとり入れることはあまりしていません。
<中略>
私にとっての「定番」を意識して選んできたので、何十年も着られるのだと思います。
「定番」は、ファストファッションからも選んでいます。自分に合っていればいいのです。逆に言えば、どんなに上質のブランドものでも、自分に合っていなければ買いません。
それほど自分にとっての「定番」にこだわる私ですが、「定番」を組み合わせるだけだと、やっぱりおもしろくない。間違いはないけれど、あまりおしゃれには見えません。そこでプラスしているのが、ちょっとおもしろいデザインの服。
<中略>

デザインの遊び心があると、昔から着ているシャツとパンツに合わせても今風に決まります。また、新しいデザインの服をとり入れることで、定番コーディネートがリフレッシュされ、よりおしゃれに魅せることができると思うのです。(本書より)

読者に寄り添う「大人な筆致」もまたおしゃれ

中年期以降は特に億劫になる「外出時のおしゃれ」や、「下半身のボリュームが気になる」「二の腕を出したくない」といった体型のお悩みに応えるコーディネート術などがたくさん紹介されており、「明日からやってみよう」と思わせてくれる一冊です。

おしゃれのカリスマの人を前にした際、「憧れ」を抱くことはあっても、自分に照らしてみると「自分にはやっぱ無理だよな……」といった置いてけぼり感を感じることもあります。しかし、本書にはそういう感じがいっさいありません。小畑さんの文章は、難しい言葉、奇を衒った言葉はいっさいなく、あくまでも読者によりそったものばかり。この優しく、ときに控えめな大人な筆致もまた、小畑さんのおしゃれの美学が詰まっているように思いました。

「ひと手間を惜しまないことで、おしゃれ度が上がる」

中年以降の女性はもちろん、男性が読んでも楽しい本書。どういった経緯で制作されたのか、担当編集者に聞きました。

「本書で特に意識したことは、『いくつになっても、自分に合うおしゃれを楽しめる』『服は大切に着るものだ』ということをきちんと伝えたいということです。小畑さんは、着心地がよければプチプラも着ていらっしゃいますが、好きな服はケアをしながら何十年も着こなしています。服をきれいに見せるひと手間を惜しまないことで、おしゃれ度が上がるということを実感しました」(担当編集者)

「年齢を重ねたからこそ、若い頃にはできなかったおしゃれができる」…本書からはそんなことを強く感じました。ぜひ手にとってみてください。

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