監督オファー途切れない奈緒、20代後半になった気づいたこと 「演じた役の人生は今後どうなっていくのかな。作品が終わった後も考えます」

磯部 正和 磯部 正和

 

2019年公開の映画『ハルカの陶』で初主演を務めて以来、映画、ドラマと出演作が途切れることがない俳優の奈緒。特に2021年下半期は、立て続けに出演映画が公開され、毎週のように舞台挨拶等に立つ奈緒の姿が印象的だった。その後も快進撃が続き、2023年もゴールデンタイムの連続ドラマ『あなたがしてくれなくても』の主演をはじめ、最新作映画『スイート・マイホーム』(9月1日公開)でも重要な役柄で出演する。いまや日本映画界に欠かせない奈緒の胸の内に迫る。

 最近欲張りになってきている

  若手女優のなかで、いま最も製作陣から厚い信頼を受けている俳優の一人と言っても過言ではない奈緒。特にここ数年の出演作は、一筋縄ではいかない役が多く、出演する作品ごとにさまざまな顔を見せてくれる。質はもちろんだが、量も圧倒的だ。充実一途のように感じられるなか、ここ最近、奈緒のなかで変化していることがあるという。

  「10代から20代前半は、その時にしか出せないような役に入るための瞬発力があったので、逆に作品が続いてもパッと切り替える筋肉がついていたような気がするんです。でも最近、作品と作品の間の切り替えがだんだん難しくなってきている気がして、意識的に『切り替えるぞ』と言い聞かせているんです」

  こうした変化について、奈緒は「欲張りになっているのかもしれません」と自身の気持ちに向き合う。

  「作品が終わっても、演じた役の人生は今後どうなっていくのかな、なんて考えてしまう。もっとこうすればよかったと考えることもあります。それって、役に対して欲が出てしまっているのかなと思うんです。だから手放しづらくなっているのかもしれません」

  そこには、がむしゃらに「作品に出演したい」という思いだけでは消化できない物理的な問題も生じてきているというのだ。

  「若いころはとにかく作品に出たい、たくさん経験を積みたいという思いが強かったんです。だから数多く作品に出ることが幸せだなと思っていました。でも、ふと思ったのが、やっぱり生身の人間なので、物理的に1年間に出られる本数って限られているんですよね。時間は有限。出会える作品の数も有限なんです」。

  だからこそ、作品が終わっても、パッと切り替えることが難しくなった。演じる役を手放すことに、たまらなく寂しさを覚えるようになった。こうした変化は、作品に対する立ち位置が変わることで生まれるものという見方もできる。番手が上がれば、必然的に出演する作品数は変わってくる。

  「一つの作品に取り組む時間が増えてくるというのは、その分役に集中することもできます。この変化はとてもありがたいことだと感じています」。

 『あなたの番です』出演で得た感覚

  『スイート・マイホーム』でメガホンをとったのは、俳優としても活躍する齊藤工監督。「ぜひご一緒したいと思っていた」と奈緒は目を輝かせていたが、ほかにも日本映画界で俊英と呼ばれる監督たちと作品を共にしている。奈緒のキャリアのなかで、ターニングポイントになった作品はあるのだろうか。

  「大きく変わったなと思ったのは、ドラマでは『あなたの番です』ですね。すごく面白い役があるからと挑ませていただいたのですが、どんどん現場で役が広がっていく感覚を体験でしました。素晴らしい先輩たちとの共演で、すごく多くのことを学べましたし、皆さんと一緒に作品を作っていく感覚がとても刺激的でした。半年という長い時間、楽しんで作品に臨めたというのは大きかった。その後きついことやしんどいことがあっても、あの現場を経験できたので乗り越えることができたと思います」

  『あなたの番です』で奈緒が演じた“尾野ちゃん”は反響を呼んだ。怪演などという言葉も出るなど、大きなインパクトを与える役だった。一方映画に目を向けると…。

  「私は映画をやりたくて20歳のときに上京しました。とても思い入れが強いので、出演したすべての作品が大切で選べないです」と話すが「そのなかでも『ハルカの陶』という作品は、初めて主演をさせていただいた作品で、みんなが一丸となってモノ作りをするという、基本的なことをしっかり学ばせていただいた現場でした。俳優という仕事への意識が変わった作品です」

  常にフルスロットルで走り続けている奈緒。芝居を通して内に秘める感情をアウトプットする日々だが、2023年3月に行われた「東京インディペンデント映画祭」で審査員を務めたことは、自身にとって非常に大きな経験になり、多くのことをインプットできたという。

  「インディペンデント作品なので、尺も決まっていないなか、作り手がとても自由な発想で表現している作品がたくさんありました。審査員というお仕事はありましたが、あれほど純粋に作品を楽しめたのは久しぶりでした。ワクワクしながら毎日作品を観ました。自分が初めて日本の映画をやりたいと思った感覚が蘇ってきました」

  違う視点で映画に携わったことで、より敏感に自身のアンテナが多くの感情をキャッチした奈緒。そのワクワクを胸に、さらなる表現に向かって邁進する。

 映画『スイート・マイホーム』は9月1日より全国ロードショー

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