「この模様って何柄なんだろう」そういえば…? 「私ずっと木漏れ日の模様だと思ってました」製本業界では何と呼ぶ?

太田 浩子 太田 浩子

 「この模様って何柄なんだろう」と1枚の画像を投稿したイラストレーターの「芦野公平 kohei ashino(@ashiko)」さん。この模様とは、伝票などの上部をとめているテープの、紺と緑の絵の具で描かれたような抽象的な模様のことです。見慣れているにも関わらず、「そういえば何の柄なんだろう?」と投稿が話題になりました。

 画像の冊子は、芦野さんが家族旅行で訪れた沖縄のホテルに、メモ帳として置かれていたそう。「80年代開業くらいのリゾートホテルで、メモ帳と調和する感じのレトロ感はありましたね」と芦野さん。

 何柄か想像できないまま芦野さんがX(Twitter)に画像を投稿すると、すぐに「マーブル模様です😊 製本テープの中のマーブルテープ❗️ 会社でちょっと前まで製造してました❗️」と印刷業界らしい人たちからの回答が寄せられました。ですが、「正直、どうしても大理石模様には見えず、樹木や木漏れ日に見えるといった感想の方が共感できました」と芦野さんは感じたそうです。

 多種多様な印刷や製本をおこなう1944年創業の「吉村印刷」(山口県下関市)の「印刷を楽しむブログ」によると、このマーブル柄の紙でのり付けする製本方法を「マーブル巻き」と言い、針金で綴じてクロスを巻く製本方法を「クロス巻き」と呼んでいます。マーブル巻きは、現在はほとんど機械で巻いていますが、極小ロットはまだ手作業なのだそう。担当者さんに詳しいお話を聞きました。

──帳簿などの製本テープが「マーブル」模様になったのはなぜなのでしょうか。

 マーブル巻きの模様について、残念ながらこの模様になった理由は分かりません。使い始めた時期については、古参のベテラン社員に聞いてみたところ、50年くらい前にはすでに使っていたのではないかとの話でした。

──「元々は本や帳簿の小口に抜き取りや改ざんを防ぐために印刷した模様です」とコメントされていた方も多くいらっしゃいました。

 現在のマーブル巻きは、1枚取るとページが外れたことが分かるようにはなっていません。1枚抜くとわかるというのは、まだ現在のような洋紙が出回っていない何世紀か前の話のようです。

──インクを混ぜてできたマーブル柄が小口に使われていた頃は、模様が複雑だったために1枚抜くとわかったということのようですね。マーブル巻きを使うことが減ってきているのではないかという方もいらっしゃいました。

 全国的な傾向は分かりませんが、弊社ではそこまで減っているという実感はありません。デジタル化が急速に進んでいますが、伝票製本はまだまだ現役で、マーブル巻きもクロス巻きも、作業中に使いやすい伝票を求めて、様々な現場で使われ続けています。

 ◇ ◇

 伝票などの製本に使われているテープの模様は、「マーブル(大理石)」がもとになっていました。あらためて模様を見ると「素敵な柄だなあ」「この柄のTシャツあったら欲しいな」とレトロ可愛く見えるというコメントも寄せられています。探してみると、伝票製本に使われているマーブル模様は、メモ帳やレターセットなどの雑貨にもなっているようです。

■芦野公平さんプロフィール
イラストレーター、TIS会員。書籍、雑誌、広告等の分野で活動中。イラストを提供した仕事に、Honda N-ONEカタログ、坂角総本舗130周年カタログ、新国立劇場「シリーズ 声」ビジュアル、田島木綿子『海獣学者、クジラを解剖する。』(山と溪谷社)、瀬尾まいこ『傑作はまだ』(文藝春秋)など。
https://twitter.com/ashiko

■吉村印刷
伝票製本はもちろん、上製本(ハードカバー)や並製本(ソフトカバー)の冊子製作をはじめ、多種多様な製本を行なっています。最近では、糸かがり綴じの手帳製本なども増えてきていますので、紙媒体の印刷・製本の可能性を広げていきたいと思っています。
https://www.yoshimurainsatu.co.jp

まいどなの求人情報

求人情報一覧へ

おすすめニュース

気になるキーワード

新着ニュース