「お寺が何もしていないことが問題」 京都の古寺トップ「寺が自信を失っている」

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西郊良光氏(81)は天台宗(総本山・延暦寺、大津市)の門跡寺院の一つ、曼殊院(京都市左京区)の門主に就任し、5月に晋山式に臨んだ。150年ぶりに再建された宸殿(しんでん)の落慶法要も合わせて行い、「宸殿の再建は歴代門主の悲願だった。国宝や重要文化財とともに次の時代に引き継ぐことが、責任でもある」と表情を引き締める。

宸殿では6月末まで国宝の仏画「絹本著色不動明王像」(黄不動)の原本と模写が展示され、多くの人が訪れた。「曼殊院は拝観する方が多い寺院。一乗寺近辺のお寺さんたちと力を合わせていきたい。勉強会や講演会を開催し、情報発信もしていきたい」と力を込める。

天台宗で宗議会議員や宗務総長の要職を務めながら、海外に何度も足を運び、宗教の垣根を越えた平和活動に関わってきた。ロシアによるウクライナ侵攻を懸念しながら、「核兵器廃絶、難民、教育の三つの問題を基本にすれば、ほかの宗教とも手を携えることができる」と信念を語る。理事長を務める日韓仏教交流協議会では、戦時中に日本で亡くなった韓国人を弔う活動を続ける。

宗祖・最澄(伝教大師)の言葉「己を忘れて他を利するは慈悲の極みなり」が、「年を重ねて、なお心に響くようになった」。新型コロナウイルス禍で寺が自信を失っているように感じるといい、「インターネットが普及するなど若者への布教は難しい時代だが、寺報を出したり、檀信徒に手紙を出したりしている寺は数えるほど。お寺が何もしていないことが問題だ。足元を見直さないといけない」と熱を込めた。

にしおか・りょうこう 1941年、福島県会津若松市生まれ。大正大大学院修了。79年から天台宗宗議会議員を6期務め、議長を経て、2001年から宗務総長を1期務めた。昨年10月に曼殊院門主に就任。自坊は横浜市の圓満寺。

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