処分しようとー
昨年の暮れのこと-。「処分しようと思って杉本さんに電話したんです」。松浦貫主は長年、壬生寺に電気製品を納めてくれている電器店・杉本商事(中京区)の杉本光一専務(55)に電話しました。
寺を訪れた杉本さんは倉庫で冷蔵庫を見て「なんか違う」と感じました。型番は「ニューアラスカSJ-3300X」でした。「見たところ僕が知っているアラスカシリーズとロゴが違ったんです」と杉本さん。アラスカシリーズは1969年から78年にかけてシャープが発売した冷蔵庫です。さらに杉本さんいわく「3300X」という型番は「シャープが気合入れた商品を出すときに付ける型番の一つ」だと感じたそうです。
そんな「気合を入れた」製品の冷蔵庫がきれいな姿で壬生寺に残っていることに驚いた杉本さんは、過去のシャープ製品を集めている奈良県天理市のシャープミュージアムに連絡しました。しかし、シャープミュージアムからは色よい返事が得られませんでした。
ところが、ミュージアムの担当者は「なんか気になるところがあったらしい」(杉本さん)ようで、冷蔵庫製造を手がけていたシャープの八尾事業所に50年前の冷蔵庫発見の連絡を入れてくれていました。
実は、この冷蔵庫は八尾事業所がずっと探していた製品そのものでした。八尾事業所ではシャープが製造してきた家電などを社員食堂に展示しています。
この探していた「ニューアラスカSJ-3300X」は家庭用では初の野菜室付きの冷蔵庫だったのです。そんな「記念碑的」製品なのにシャープにはなかったそうです。そして、杉本さんの元に八尾事業所から連絡がありました。